香りは自然のことば
ライフサイエンス教育研究会
9月12日(土)10:00〜18:00、13日(日) 10:00〜17:00 テレコムセンタービル 3階
出展レポート
提起した問い・目指した未来像
「香りは自然のことば」をテーマに、香りを、人が楽しむものとしてだけでなく、生きもの同士の関わりを知る手がかりとして紹介した。花や果実、傷ついた葉などが放つ分子は、周囲の生きものに受け取られ、それぞれの行動に関わることがある。私たちはその香りをどのように感じ、自然の中での働きをどこまで読み解けるだろうか。この問いを、香りを嗅ぐ体験と分子模型を通して参加者と考えた。
また、人間は自然の香りを調べ、その分子を合成したり、組み合わせたりして、暮らしの中で利用している。自然を感覚的に「よいもの」として味わうことに加え、生きものの働きと、それを研究して活用する科学の両方から理解する。そのような自然との向き合い方を広げたいと考えた。
参加者との対話から生まれた意見や気づき
香りと分子模型では、構造の近い香り分子を比べ、「分子のわずかな違いを、私たちはどう感じ取るのか」を考える入口とした。同じように思える香りにも違いがあり、その感じ方を言葉にすることで、嗅覚の働きや個人による感じ方の違いへと話を広げられる。
天然由来と合成の香料については、「合成香料は天然の香りと違うのか」という問いを扱った。同じ化学構造の分子なら、由来だけで別の分子になるわけではない。一方、植物から得られる香りには多くの成分が含まれ、単一の香料とは香りの構成が異なる場合がある。「天然か合成か」を嗅覚だけで判定するのではなく、何を比べているのかを確かめることが大切だと考えた。
香り分子のメッセージでは、香りを放つ植物と、それを受け取る昆虫や動物など、両方の立場から考えた。人には心地よい花や果実の香りも、ほかの生きものにとっては食物や花を見つける手がかりになり得る。同じ香りを、人の印象だけでなく、生きもの同士の関係から捉える視点が生まれた。
対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望
今後は、植物が放つ香りを、どの生きものが、どのように受け取り、行動につなげているのかを、より具体的な事例で紹介したい。あわせて、人が香りの違いを感じる嗅覚のしくみも取り上げる。「香りを放つ側」「受け取る側」「それを調べる人」という視点をつなぐことで、生きものの化学コミュニケーションをさらに身近にできると考える。
香りをめぐる科学は、食品や日用品など、私たちの暮らしにも結びついている。自然から得られる香りを人間社会がどのように研究し、再現し、利用してきたかを示すとともに、これからの利用のあり方も参加者と考えていきたい。香りを入口に、自然のしくみと科学技術の関係を対話できる展示へ発展させる。
当日の様子