匂いと触覚で感じる、植物の感覚の世界を体験しよう!
JST ERATO豊田植物感覚プロジェクト
9月12日(土)10:00〜18:00、13日(日) 10:00〜17:00 テレコムセンタービル 3階
出展レポート
提起した問い・目指した未来像
本企画では、「植物にも“感覚”があることを知ると、私たちの植物への見方や関わり方はどのように変わるだろう?」という問いを来場者に投げかけた。
植物は、匂いや接触など周囲からの刺激を感じ取り、それに応じてさまざまな反応を示す。本企画では、「体験①植物の匂い当てクイズ」で身近な植物の匂いを実際に嗅ぎ、植物が匂いを介して情報を伝えることを紹介した。「体験②気孔の顕微鏡観察」では、葉の表面にある気孔を観察するとともに、植物が匂いを感じ取り、体内で反応が広がる様子を蛍光で可視化した動画を紹介した。「体験③ハエトリソウの観察」では、感覚毛への刺激によって葉が閉じる様子を実際に観察するとともに、刺激を感じた際に植物体内で反応が広がる様子を蛍光で可視化した動画を紹介した。これらの動画には、植物が匂いや接触などの刺激を感じて応答する様子を世界で初めて可視化した本プロジェクトの中核技術を活用し、普段は目にすることのできない植物の「感覚」様の応答を目に見える形で体験してもらうことを目指した。
こうした最新の研究成果と、匂いを嗅ぐ、顕微鏡で観察する、植物の動きを見るといった体験を組み合わせることで、植物を単に「動かない存在」としてではなく、周囲の環境を感じ取り、情報を伝えながら生きる存在として捉え直すきっかけをつくることを目指した。また、植物の感覚という未知の世界への驚きや疑問を科学への興味につなげるとともに、植物をより身近な生き物として捉え、その見方や関わり方を一人ひとりが考えられる未来を目指した。
参加者との対話から生まれた意見や気づき
参加者からは、「植物は匂いをどうやって感じるのか」「匂いを感じる仕組みは動物と同じなのか」「なぜカルシウムが情報伝達に使われるのか」など、展示内容からさらに一歩踏み込んだ質問が多く寄せられた。特に、学校で気孔について学んだ子どもが、気孔が空気の出入り口であるだけでなく、匂い物質もそこから取り込まれることを知って驚くなど、既に持っている知識と最新の研究成果が結びつくことで、植物への見方が広がる様子が見られた。大人からも同様の反応があり、身近で既知の知識を入口として新たな発見につなげることが幅広い年齢に対して有効であることを実感した。
ハエトリソウの観察では、「指を入れたら噛まれるの?」「周りの毛は何のためにあるの?」など、実物を見たからこそ生まれる質問が多く寄せられた。また、子どもの「閉じた葉は開けられるの?」という疑問をきっかけに、スタッフと一緒に実際に確かめる場面もあり、参加者自身の疑問から新たな発見や興味が生まれる様子が見られた。
これらの対話を通じて、参加者の関心を引き出すためには、気孔や身近な植物の匂いなど、既に知っていることや日常生活と結びついた内容を入口とすることが有効である一方、体験には、未知の現象について参加者自身が新たな発見を実感できる要素を取り入れることが、驚きや納得感につながるという気づきを得た。
「植物の研究によってどのような未来をつくりたいか?」を尋ねたアンケートでは、大人は「研究が進んで新しい植物の能力が見つかる未来」、子どもは「食べ物や自然が増え、地球を守ることにつながる未来」を選ぶ傾向が見られた。こうした結果から、社会課題の解決だけでなく、基礎研究による新たな発見そのものへの期待も大きいことがうかがえ、植物の基礎研究を社会に伝える意義を改めて認識する機会となった。
対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望
今回の出展では、匂いを嗅ぐ、顕微鏡を覗く、ハエトリソウの動きや、植物の反応を蛍光で可視化した動画を見るなど、五感を通して植物の「感覚」様の応答を体験できる展示に、特に子どもたちの関心が集まった。一方で、可視化された反応の背景にある情報伝達の仕組みやメカニズムまで理解を深めてもらうためには、さらなる工夫が必要であることが分かった。今後は、模式図などを活用して反応が起こる仕組みを分かりやすく示し、可視化された現象への驚きから、その背景にある科学的なメカニズムへの興味へとつなげていきたい。
また、参加者との対話から、身近で既知の内容を入口とし、そこに未知の発見や驚きを組み合わせることが、研究への興味や納得感につながることが分かった。今回、参加者が何を身近なものとして捉え、何に未知の驚きを感じるのかを実際の反応から知ることができたため、この知見を今後のアウトリーチ活動やプレスリリースにも活用し、研究成果をより効果的に発信していきたい。
さらに、子どもたちから寄せられた「なぜカルシウムが情報伝達に使われるのか」「匂いを感じるために気孔は開閉するのか」「匂いを感じる仕組みは動物と同じなのか」といった質問には、説明者にとっても改めて考えさせられるものがあった。参加者の素朴な疑問や自由な発想は、研究者自身が研究を異なる視点から捉え直すきっかけにもなる。今後も、研究成果を一方的に伝えるだけでなく、参加者自身の発見や疑問を起点とした双方向のコミュニケーションを重視したい。また、日々の研究活動の中からアウトリーチにつながる題材を見つける意識を持ち、社会との対話から得られた視点を研究活動や研究成果の発信へ還元していきたい。
当日の様子