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国連・持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて科学と政策をどうつなげるか? ~日本及び世界での政策決定への科学的助言の取組み~
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国連の持続可能な開発目標(SDGs)において掲げられている17の目標と169のターゲットは、日本を含む先進国と途上国がともに取り組むべき地球規模の普遍的課題です。その達成に向けては非常に多岐にわたった取り組みが必要ですが、その中で科学技術イノベーションが果たす役割には特に大きな期待が寄せられており、国連の場でも検討が行われています。
このような科学技術イノベーションへの期待を、SDGsの達成にむけた具体的取組みにつなげていくためには、関係する幅広い政策に対して科学的な知見を適切に提供しつつ、効果的な政策の立案と実施につなげていくための取り組みが不可欠です。このような役割を果たす科学的助言の制度(政府科学顧問や科学的助言のための組織など)は、近年諸外国・国際機関で制度化が進み、日本でも外務省に科学技術顧問が設置されています。
本セッションでは、SDGsの達成に向けて科学的助言に対して求められる新たな課題について、我が国や海外の政府科学顧問や政策担当者から実際に進められている取り組みを紹介いただくとともに、国際的な協調のもと進めて行くための具体的課題ついて議論を行います。

企画提供者 科学技術振興機構 STI for SDGs タスクチーム
開催日 11/25(土)14:00-15:30
会場 8階 会議室B
形式 セッション(会議室)
URL https://www.jst.go.jp/sdgs/index.html
備考 ●同時通訳あり

タイムテーブル:

登壇者の紹介

講演者

岸 輝雄(外務大臣科学技術顧問(外務省参与))
Teruo Kishi, Science and Technology Advisor to the Minister for Foreign Affairs

1969年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(工学博士)。同大学助手、助教授を経て1974年同大学教授に就任。1995年東京大学先端科学技術研究センター長、2000年東京大学名誉教授に就任(現職)。2001年独立行政法人物質・材料研究機構理事長(現在、名誉顧問)、2003年日本学術会議副会長、2007年日本工学会会長、2009年日本材料強度学会会長(現職)、2013年新構造材料技術研究組合理事長、内閣府政策参与(科学技術政策・イノベーション担当)に就任。2015年外務大臣科学技術顧問(外務省参与)に就任。

レオニダス・カラピペリス(駐日欧州連合(EU)代表部 公使参事官、科学技術部長)
Leonidas KARAPIPERIS, Minister-Counsellor and Head of Science and Technology Section, Delegation of the European Union to Japan

英サセックス大学にて学士号(数理物理学)を取得した後、米コーネル大学にて博士号(物理学)を取得。フランスの民間企業で研究者として勤務した後、1988年に欧州委員会に入り、様々なポストにおいて、科学技術イノベーションに関連したプロジェクトの管理、政策立案や国際協力に携わる。その他、OECDやCERNなどの国際協力機関において欧州委員会を代表した。

ダーン・ドゥ=トイ(南アフリカ共和国科学技術省副次官)
Daan du Toit, Deputy Director-General for International Cooperation and Resources, Department of Science and Technology, South Africa

ダーン・ドゥ=トイは、2014年以来、南アフリカにおける国際的な科学技術・イノベーションの全ての側面を担当。 OECDグローバル・サイエンス・フォーラム(GSF)や地球観測に関する政府間会合(GEO)の設立を含む国際的な科学技術協力に特化した多国間フォーラムにおいて、南アフリカを代表して中心的役割を果たした。

ピーター・ティンデマンス ユーロサイエンス事務局長
Peter Tindemans, Secretary General, EuroScience

オランダ・ライデン大学にて博士課程修了。専門は理論物理学。1978年からオランダの科学技術政策と、1999年からアフリカ、南アメリカ、欧州、アジア地域のイノベーション政策に関わってきた。1992年にOECD Megascience Forum理事長。ユーロ-サイエンスの創立メンバーを得て、2012年より現職。

【コメンテーター】

デビッド・コープ(元・英国議会科学技術局事務局長/ケンブリッジ大学クレアホールファウンデーションフェロー)
David Cope, Former Director, UK Parliamentary Office of Science and Technology / Foundation Fellow, Clare Hall, University of Cambridge

1967年ケンブリッジ大学卒業、1968年ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修了。14年間にわたり英国議会事務局科学技術局事務局長を務める。現在はケンブリッジ大学のクレアホールファウンデーションフェロー。また、英国の英国連邦奨学金委員会の委員でもあり、同委員会はSDGsを作業指針として採用し、後発開発途上国の研究者に対して400件以上、総額35億円の助成金を支給している。この他、東京大学先端科学技術研究センターフェロー、同志社大学客員教授を務める。

【モデレーター】

有本 建男(政策研究大学院大学教授/科学技術振興機構 研究開発戦略センター 上席フェロー)
Tateo Arimoto, Professor, National Graduate Institute for Policy Studies (GRIPS) / Principal Fellow, Center for Research and Development Strategy (CRDS), Japan Science and Technology Agency (JST)

1974年京都大学大学院理学研究科修士課程修了、科学技術庁入庁。内閣府大臣官房審議官(科学技術政策担当)などを経て、2004年文部科学省科学技術・学術政策局長。2005年内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官。2006年から、(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センターセンター長、研究開発戦略センター副センター長、2015年から同上席フェロー。また2012年より政策研究大学院大学教授を兼務。この他、経済開発協力機構(OECD)の科学助言に関する研究プロジェクトの共同議長、外務省科学技術外交推進会議委員等を務める。著書に「科学的助言-21世紀の科学技術と政策形成」(共著、東京大学出版会、2016年)など。

【司会】

大竹 暁(科学技術振興機構上席フェロー)
Satoru Ohtake, Principal Fellow, Japan Science and Technology Agency (JST)

1957年東京都出身。84年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。科学技術庁、文部科学省研究振興局基礎基盤研究課長、独立行政法人宇宙航空研究開発機構総務部長、内閣府参事官(総括担当)(政策総括官(科学技術政策・イノベーション担当)付、文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当)、科学技術振興機構理事、内閣経済社会総合研究所総括政策研究官を経て、2017年4月から科学技術振興機構上席フェロー(国際担当)。また2016年5月から東京大学政策ビジョン研究センター客員教授を兼務。

開催報告

本セッションは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成において科学技術イノベーションに大きな期待が寄せられている中で、政策と科学を結びつける科学的助言のあり方とSDGs達成に向けてどのような取り組みを今後進めていくべきかを考えることを目的に開催しました。 大竹暁氏(JST上席フェロー)による問題提起の後、岸輝雄氏(外務大臣科学技術顧問)、レオニダス・カラピペリス氏(駐日欧州連合(EU)代表部公使参事官・科学技術部長)、ダーン・ドゥ=トイ氏(南アフリカ共和国科学技術省副次官)の3名から、日本・EU・南アフリカにおける政府科学顧問や政策への科学助言の制度と、SDGs達成に向けた検討状況や取り組みをご紹介いただきました。また、ピーター・ティンデマンス氏(ユーロサイエンス事務局)からは、SDGsの達成には多くの要素が相互に関係しているためシステム思考やアプローチが求められること、コメンテーターのデビッド・コープ元・英国議会科学技術局事務局長からも、SDGsの異なる目標間の関係を科学的に把握して対処していくことが必要であるとのコメントがありました。その後、有本建男氏(政策研究大学院大学教授/JST研究開発戦略センター上席フェロー)の進行のもと約80名の参加者との間で活発な議論が行われました。

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