SCIENCE AGORA

サイエンスアゴラ2016 開幕・閉幕・キーノートセッション 開催報告

キーノートセッション6
震災から5年 ~いのちを守るコミュニティ~

■開催概要

前半
Part1

後半
Part2

■登壇者

■紹介したいURL

■企画の意図

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震から5年が経過しました。
セッションでは、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震において、被災地での支援、コミュニティ再生や防災教育など、さまざまな視点で取り組まれている「いのちを守る」活動について紹介しました。さらに、これからの社会を担う中高生からも現在行っている防災・減災の取り組み、思いを伝えてもらいました。
未来社会にどのようなくらし・コミュニティのかたちを求めるか、どのような価値観で社会をつくるかという視点を基軸に、防災・減災に関する各地の活動・取り組みを振り返り、できたこと、できなかったことについて、対話を通して共有する場にしたいと考えました。

■内容

大震災から学び伝える

第1部では、近年、日本で発生した大地震による被害と被災地での状況、復興までの活動について、1995年の阪神・淡路大震災を起点に2016年の熊本地震までを振り返りながら、それぞれの大学の役割とともに紹介しました。
兵庫県立大学の室崎先生からは、阪神・淡路大震災で得た教訓を基にいのちを守ること、暮らしを取り戻すことの大切さ、そのためのコミュニティづくり、社会包摂についてのお話をいただきました。
東北大学の中鉢先生からは、東日本大震災での教訓を踏まえて、災害時の正確な情報伝達の重要性と、学術とメディアとの連携による取り組みをご紹介いただきました。
大阪市立大学の吉田先生からは、学術と市民との協働によるシチズンサイエンスの概念の説明、さらにICT(Information and Communication Technology)という新しい技術を活用した減災・防災への取り組みについて、ご報告がありました。
最後に、今年の3月に発生した熊本地震の際、地元の大学がコミュニティの一員として行った活動について、熊本大学の藤見先生からご発表いただきました。コミュニティの中で大学ができることを、これまでの経験に基づいて模索し、実際の活動につなげていく様子をうかがうことができました。
これまで、自助・共助・公助という役割分担の中で、つながりやネットワークがなかなかできにくい状況にありましたが、大学がそれをつなげて新しい仕組みをつくろうと取り組む姿を知ることのできるセッションでした。

レポート
すり鉢状の未来館ホールで行われたセッションの様子 提供:大阪市立大学広報室

コミュニティがいのちを守る

第2部では、コミュニティで実際にどのような取り組みが行われているのかを、大学、企業との連携、高校生たちの地域での防災・減災活動の報告を通じて紹介しました。
大阪市立大学の三田村先生からは、都市防災教育研究センターで取り組んでいるコミュニティ防災教室の活動と、昨年度に実施した中学生参加のアクティブラーニング型災害対応訓練についてご報告いただきました。続いて、実際の訓練の様子と参加した中学生へのインタビューのビデオが流され、こうした活動に参加して中学生の意識がどう変わったかなどを知ることができました。
積水ハウスの東田氏からは、東北の工場を拠点に展開しているキッズ防災リーダー育成プロジェクトや、地域と一緒に取り組んでいる災害に強いまちづくりについてお話しいただきました。震災をきっかけに先進的な企業が地域での取り組みを始めている事例として、印象的な発表でした。
最後に、日本で初めて理系の災害科学科を設置した宮城県多賀城高等学校の防災・減災に関する活動について、2年生2人から発表がありました。東日本大震災当時の状況や、その後の取り組みについて分かりやすくまとまった報告となっていて、登壇者、参加者ともに震災時を思い起こしながら聞いている様子でした。
「コミュニティがいのちを守る」ということで、その構成員である大学、企業、そして中学校や高等学校が、今後のコミュニティの防災力向上にとっていかに大切かということが、まさに伝わったセッションとなりました。

レポート
宮城県多賀城高等学校の2年生による発表 提供:大阪市立大学広報室

子どもが変わればコミュニティも変わる

最後に、兵庫県立大学の室崎先生からコミュニティというのは実は大人が変えていくものではなく、子どもたちが変わることで親の世代の大人も変わり、それがコミュニティづくりにつながっていくというコメントがありました。
それを受けて、宮城県多賀城高等学校の生徒さんたちが学校での防災についての学び、活動で今後深めていきたいこと、新しくできたつながりや自分の中の変化について、それぞれが思いを語ってくれました。
高校生たちの防災・減災やいのちを守ることに対する真摯な思いや強い意志に、会場の参加者のみなさんも真剣に耳を傾けていました。

まとめ

東日本震災から5年というこの時期に、これまでの震災を振り返り、それぞれの地域での防災・減災に関する取り組みを知ることで、コミュニティ、さまざまなステークホルダーとの連携と協働の大切さを再認識できる機会をつくることを狙いに開催しました。
阪神・淡路大震災から熊本地震まで、時系列に沿った被災地の状況と活動、加えて、ICT技術やメディアを活用した防災・減災活動、企業による子どもたちの防災意識啓発など新しい取り組みを知っていただくことができました。
セッションの最後には、宮城県多賀城高等学校の生徒さんたちが、東日本大震災で体験したことや学んだことを、自分たちの中にとどめず、他の地域やあとの世代の人たちに伝える活動をしていきたいとの思いを語ってくれました。
今回、大学や企業の役割、新しく出てきたICT・マスコミの役割、そして地域の中の教育の役割を再確認することができました。特に多賀城高等学校の取り組みは学校の防災・減災活動のトップを走るもので、大学・企業・行政の防災活動と連携して、日本全国さらには国際的に広げていくことが今後の課題になります。

感想

ひとつひとつは短い時間ではありましたが、大学、企業、中高生など多彩な登壇者からの発表を聞くことのできる場を設けられたことは、とても良かったと思います。事前の準備・調整はかなり大変だったのですが、キーノートセッションとしての参加という貴重な経験と今回のセッションで得られた関係を、今後の連携活動につなげていきたいと考えています。
口頭発表のみでなく、それぞれの活動をパネル展示してもらえたことで、参加してくださった方にはより分かりやすいものにできたと思います。
参加者とのディスカッションの時間が取れなかったことが残念ですが、これからの防災を担う高校生たちの思いを自分たちの言葉で伝えてもらったことで、参加者にも訴えるものが大きかったのではないかと思います。

文責:河本 ゆう子(主催者/大阪市立大学都市防災教育研究センター事務局)

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