未来の共創に向けた社会との対話・協働の深化

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対話協働

2022年度
「STI for SDGs」アワード 
受賞取り組み紹介

林業活性化と熱帯林の保護を目指したフラン樹脂加工木材の開発

団体名:ニッポニア木材株式会社、
京都府立大学 森林科学科 生物材料物性学研究室・森林資源循環学研究室
※ニッポニア木材株式会社は2022年11月に株式会社フランウッドに社名を変更しました。

<取り組み概要>

 現在、日本国内で使用されている木材の自給率は約40%程度にとどまっている一方、希少な熱帯産広葉樹(ハードウッド)を輸入し、建築用材として利用している。伐採が進んだ熱帯林の再生には長い年月がかかるため、気候変動に与える影響への懸念が深まっているのに対して、日本においては国土の約70%が森林であり、戦後に植えられたスギやヒノキは十分成長しているにも関わらず、耐久性や硬度不足のため用途が限られ活用が進まず、森林の荒廃も進んでいる。このことから、「日本は自国の森林は守りながら、他国の希少な樹木を得るために森林破壊を容認している」と受け取られかねない状況にある。

 本取り組みでは、スギやヒノキの耐久性や硬度を改善しハードウッド化するため、バイオ素材だけを用いたフラン樹脂加工技術を開発した。本取り組みで開発された「フラン樹脂加工木材」は、トウモロコシの芯などの農産廃棄物から製造されるフルフリルアルコールを木材中に浸透させ、木材中にフラン樹脂を生成させたものである。従来の木材加工技術では、化石資源由来の樹脂や毒物を使用しているが、本技術ではバイオ素材のみで生成された樹脂が使用されており、廃棄時には焼却も可能である。耐久性が向上したことと、現在輸入されているハードウッドと同程度のコストで生産可能であることから、ハードウッドの代替のほかに、従来は鉄やコンクリートなどが用いられていた部分にも、一部、建材としての活用が可能になる。さらに、全てバイオ素材であることから、二酸化炭素の固定量が増えるとともに長期にわたる固定が可能で、脱炭素化社会をけん引する材料になりうる。また、中山間地域の森林・木材産業の振興にも寄与する取り組みである。

  • (フランウッド化では水分の代わりにフラン水溶液を木材細胞に染み込ませた後、水分を抜き、フランを樹脂化させ固める)
  • (フランウッド化により、寸法の安定、重く硬くなる、疎水性の向上、茶褐色になるなどの変化が得られる)
<受賞理由>

 本取り組みは、海外の森林破壊への対策と国産木材の有効活用の両方に、独自の技術で貢献することを目指したものである。SDGs目標15に定められている陸の資源の保護のみならず、農産廃棄物のアップサイクル、廃棄時の環境負荷への対処、中山間地域の産業振興など、多様な視点を持って活動している。従来依存してきたハードウッドとの価格競争力もある。活動自体の持続可能性にも十分考慮されており、今後の発展が大きく期待できる。主としてSDGs目標15のほか、8、10、11、12の達成に貢献するものであり、かつ他の目標達成を著しく損なうことのない活動として、選考委員会において優秀賞にふさわしいと判断された。

  • (フランウッドの活用例。ショッピングセンターや動物園、一般住宅などに活用されている)
<取り組み紹介動画>

受賞者による取り組み紹介(サイエンスアゴラ2022 ミニステージイベントにて)
イベント全編はこちらでご覧いただけます(前半:各団体の活動紹介ピッチ,後半:トークセッション)

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