対話協働
2022年度
「STI for SDGs」アワード
受賞取り組み紹介
信大クリスタルが拓く世界の水課題ソリューション
団体名:信州大学 信大クリスタルラボ
<取り組み概要>
SDGs目標6に定められている安全な水の提供は年々改善されてきているものの、特に途上国においてはまだ十分に達成されているとは言えない。また、水の輸送においては、そのためのエネルギー、容器として使われるペットボトルなど、間接的な課題も多く存在する。
本取り組みでは、地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(文部科学省)とセンター・オブ・イノベーションプログラム(以下、COI)の研究成果の一部を活用し、フラックス法で育成した結晶材料およびその関連材料からなる「信大クリスタル」を開発した。信大クリスタルの一種のチタン酸ナトリウム結晶や層状複水酸化物結晶は、水中に溶解し健康被害を引き起す重金属イオンやフッ化物イオンなどの有害物質イオンを極めて簡単に吸着・除去する性質をもつ。また、特定の有害物質のみを除去し、水の味を決めるミネラル成分を残す結晶を開発することで、地域の特性を生かした付加価値の高い水を作り出すことも可能としている。現在、国内においては企業などとの協働で携帯型/災害時用/家庭用浄水器や産業用浄水デバイスの社会実装(製品化)、長野県内でのアクアスポット(無料浄水設備)の設置、および地場産業での活用などを中心に展開が進められている。信大クリスタルの製造において、原料は安価で、量産も容易なため、国内のみならず途上国での活用の期待も大きい。海外においては、タンザニアやケニアで飲料水に含まれるフッ化物イオン除去の活動に注力している。さらに、信大クリスタルの社会展開やブランド化を推進する信大クリスタルラボを設置し、当ラボを中心としたアクアエコシステムの構築にも取り組んでいる。
<受賞理由>
本取り組みでは、COI拠点での研究成果を活用した独自の技術で低コスト・高効率の水浄化システムを確立している。日本国内においては、水の付加価値の向上による地域活性化への効果がより高いものと考えられるが、途上国においては安全な水の供給へ大きく貢献するものであり、ライセンス供与などにより持続可能な展開が十分に期待できる。大学が保有する高い技術をベースに、途上国を含めたグローバルな社会課題解決に資する具体的なサービス開発にも取り組んでいる。主としてSDGs目標6、7、14の達成への貢献が期待できるものであり、かつ他の目標達成を著しく損なうことのない活動として、選考委員会において優秀賞にふさわしいと判断された。