未来の共創に向けた社会との対話・協働の深化

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対話協働

2022年度
「STI for SDGs」アワード 
受賞取り組み紹介

誰もが自分の医療データを持ち歩ける時代へ

団体名:東京大学医用情報工学講座、
株式会社Kompath

<取り組み概要>

 現代の日本では、多くの人が月1回以上の頻度での医療機関受診や、複数の医療機関での検査を行っていると推定されるが、各個人の医療データは基本的に各医療機関が保有している。医師は患者の要望があれば本人の医療データを提供する義務があるが、特に画像データは特殊なフォーマットで容量も大きく、保有する病院外での利用が困難な状況にある。このため、現実には患者が自身の医療データに自由に接する機会は極めて少なく、効率的かつ適切な活用が実現できていない。

 本取り組みでは、患者が「自分の医療画像データを自身で保有し、医療やヘルスケアに活用できる」ことを目的としたアプリを開発し、無料で提供している。このアプリでは、医療用画像データの質と量を低下させることなく、高速かつ効率的に患者のスマートフォンなどに取り込むことができ、輝度値や観察断面、過去と現在のデータの時系列比較といった効率的な閲覧を直感的な操作で可能としている。本アプリは、日本のみならず海外でも利用されており、リリース後4年が経過した現在も高いダウンロード実績がある。その利用は患者のみでなく、医療関係者にも広がっている。

  • (複数の病院を受診した際の医療(画像)データをスマホで閲覧可能に)
  • (無償で提供中のアプリ“eMma”。患者以外にも医療機関での活用も広がっている)
<受賞理由>

 本取り組みでは、患者が自身の医療データを有効活用することを目的にしたアプリ開発が行われている。一般的に医療における画像データはフォーマットの特殊性や容量の問題から病院外での管理運用が困難であるが、本取り組みではデータの質と量を損なうことなく、患者が容易に閲覧可能な形式に変換することを実現した。現時点では認証の問題からヘルスケア領域での利用にとどまっているが、医療データを患者と医師が共有する分散型システムとして、今後、医療領域での活用も大いに期待できる。

 研究から社会実装へのプロセスもしっかりと計画・実行されており、主としてSDGs目標3、9の達成につながり、かつ他の目標達成を著しく損なうことのない活動として、選考委員会において科学技術振興機構理事長賞にふさわしいと判断された。

  • (患者が自分の医療画像データを管理できることで、ヘルスケアや医療の現場で活用可能になる)
<取り組み紹介動画>

受賞者による取り組み紹介(サイエンスアゴラ2022 ミニステージイベントにて)
イベント全編はこちらでご覧いただけます(前半:各団体の活動紹介ピッチ,後半:トークセッション)

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