未来の共創に向けた社会との対話・協働の深化

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対話協働

2021年度
「STI for SDGs」アワード 
受賞取り組み紹介

サクラマス循環養殖による温暖化対応種の開発とイクラの持続的生産

団体名:株式会社Smolt、宮崎大学

<取り組み概要>

 世界的な漁獲量の増加や温暖化に代表される環境変化により、水産資源の確保および持続的な利用はSDGs目標14として掲げられ、大きな課題となっている。また、日本は海水温の幅の広さによる大きな漁場があり、多様な魚種が存在するが、その保全も課題となっている。

 本取り組みでは、海水温のモニタリング技術、種苗の形質評価技術、海水への馴致方法などの技術の組み合わせにより、宮崎県での淡水環境と海水環境を用いた循環養殖によるサクラマスの完全養殖手法を確立し、魚肉および魚卵の持続的生産を可能にした。また、独自の選抜交配により、地球温暖化へ対応した品種の開発を進めている。

 本取り組みにより、既存の海の養殖ではオフシーズンとなる冬場でも設備をサクラマスの養殖に活用することができ、漁業版「二毛作」も可能となるほか、生産した魚卵(イクラ)についてもブランド化に成功している。

  • (漁業版二毛作概念図)
  • (冬期は海の生け簀を活用)
<受賞理由>

 本取り組みは、天然物志向の強い日本において、天然物を保全し養殖へシフトする世界的な流れに沿った新しい息吹を感じられる。また、地域に根ざした独自の研究を事業化し、地元の生産者ともしっかりとしたコミュニケーションを取りながら、パートナーシップによって成果を出している。加えて、養殖場を持たないファブレスな事業展開や、既存の養殖業の閑散期に当たる冬場の設備活用による生産性向上など、ビジネス戦略を明確にしている点、さらに、暑さに強い種苗の開発は、気候変動による海水温の上昇への対策としても期待できる点が包摂性、展開性やSTIの活用として、高く評価された。水産資源の保全を目指すSDGs目標14だけでなく、気候変動に関する目標である目標13の達成につながる活動として、選考委員会において科学技術振興機構理事長賞にふさわしいと判断された。

  • (暑さに強いサクラマスの種苗を独自に開発)
  • (Smolt 代表取締役 上野 賢 氏)
<取り組み紹介動画>

取り組み紹介動画「宮崎の海で育むサクラマス」

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