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資料4

開発課題名「マイクロ秒分解能・液体界面現象モニターの開発」

最先端研究基盤領域 先端機器開発タイプ

開発実施期間 平成27年12月〜平成31年3月

チームリーダー :  酒井 啓司【東京大学 生産技術研究所 教授】
サブリーダー :  山川 義和【株式会社トリプル・アイ 技術部 部長】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  株式会社トリプル・アイ、日本ペイントホールディングス株式会社、株式会社リコー
T.開発の概要
 微小液滴を射出し、非接触誘電プローブによりその力学応答を測定することで、時々刻々に変化する液体の表面エネルギーをマイクロ秒の分解能で計測する表面・界面エネルギーモニターを開発する。さらに複数のノズルにより射出される異種液体の微小球が衝突融合することにより開始されるさまざまな反応現象を、マイクロ〜サブミリ秒までの時間領域での光学測定により追跡する機能を付加する。本装置により、近年用途が拡大しているインクジェットなどの微小液体の動態と反応に関する詳細な情報が得られ、関連分野の研究開発の促進が期待できる。
U.開発項目
(1)表面張力、液-液界面張力の高時間分解能測定装置の開発
 微小液滴の表面張力と粘性変化を測定する小型装置を開発し、時間分解能10 μs、表面張力範囲10〜100 mN/m、測定精度 表面張力1 %・界面張力5 %、測定・解析時間1分以内を実現し、最終目標を上回った。
(2)界面反応の高速モニタリング用オプションの装着
 測定対象は、拡散現象、動的濡れ現象や粘性緩和現象だけでなく、紙などへの液滴の浸透性や表界面張力の長時間測定も実現した。また、粘性測定精度1 %、液滴衝突位置精度0.1 μmを実現し、最終目標を大きく上回った。
V.評 価
 本課題は、ノズルから射出された微小液滴の飛翔位置と径と振動の計測から、表面張力と粘性変化を高精度に測定する装置を開発するものである。
 開発は極めて順調に進捗し、当初目標より広い測定時間域で高速現象を計測可能にし、測定、解析時間を短縮した小型の測定装置を開発した。また、当初の目標になかった、固体/液体基板上への液滴の吸着、濡れ、浸透挙動を20分間持続観察することにも成功している。これは、高精度3Dインクジェット技術開発にもつながる重要な情報であり、早期の市場展開が期待される。この他にも、非接触での血液粘性評価など多様なニーズに応えながら新しい計測システムを開発しており、オンリーワン技術として高く評価できる。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。[S]