チームリーダー : |
澤田 誠【名古屋大学 環境医学研究所 教授】 |
サブリーダー : |
松尾 英行【昭和精機株式会社 商品企画室 グループ長】 |
中核機関 : |
名古屋大学 |
参画機関 : |
昭和精機株式会社、名城大学、東亞合成株式会社、九州大学
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- T.開発の概要
- 本開発では、座標再現機能を搭載したホットメルトフィルム−レーザーマイクロダイセクション技術を用いて試料を作製することにより、これまで不可能であったLC-MSによる質量分析イメージングを実現する前処理装置を開発する。また、同技術を応用してMALDI/TOF-MSによる質量分析イメージングでの1マイクロメートルの空間分解能を達成する。これにより従来技術に比べて、より多様な分子の生体内分布を、より高い空間分解能で解析できるようになり、さまざまな生命科学分野での活用と普及が期待できる。
- U.開発項目
- (1)LC-MS用イメージング前処理システムの確立
- 薬剤(ピロカルピン)の検出が単一細胞サイズの切り出しでS/N比7.2の感度、生体物質(アセチルコリン)の検出がS/N比11.9の感度で検出可能なLC-MS用前処理装置を開発した。また、384穴プレートに直接貼り付けるホットメルトフィルムスライド(デバイス)を開発し、分析精度の向上とコスト削減を実現した。
- (2)MALDI/TOF-MS用イメージング前処理システムの検証
- 「要素技術」ステージで開発したMALDI/TOF-MS用の前処理装置を改良し、サンプルの回収数、回収スポットの精度及び生体中の多物質分析を実施した。スライド当たり20,000スポットを越える切り出しを実現し、スポットの回収率を100%達成し、神経疾患患者由来検体から100種類以上のシグナルペプチドを検出した。
- (3)質量分析イメージング用ソフトの開発
- 画像のタイリング、質量分布のオーバーレイ機能、ヒートマップ表示、3D構築など、全ての機能を実現するソフトウェアを開発した。
- V.評 価
- 本課題は、要素技術開発時に独自に開発した「座標再現機能による前処理技術」と「ホットメルトフィルムを用いた特異的分離方法」を活用して、質量分析イメージング前処理装置を開発するものである。
開発は着実に進捗し、薬剤やペプチドをはじめとする(低分子から高分子の)生体物質の検出を高感度に検出可能な前処理装置を開発した。装置としての性能は全て目標を達成しており、単一細胞サイズのLS-MSイメージングを世界に先駆けて実証した。さらに疾患バイオーマーカーの探索やユーザーによる評価も行われ、本機器応用のさらなる発展が期待できる。
今後は、現在検討されている実用機の操作性(特に、スループット)向上を図り、ユ―ザーからの要請に速やかに対応し、学術上あるいは産業上新たな知見が早期に得られることを大いに期待する。
本開発は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。 [A]
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