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資料4

開発課題名「非同期計測による高周波電界の空間分布可視化技術の開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成27年12月〜平成31年3月

チームリーダー :  久武 信太郎【岐阜大学 工学部 電気電子・情報工学科 准教授】
サブリーダー :  宮地 邦男【シンクランド株式会社 代表取締役社長】
中核機関 :  岐阜大学
参画機関 :  シンクランド株式会社、アークレイ株式会社
T.開発の概要
 本課題では、自励発振器等から放射されるマイクロ波帯からテラヘルツ波帯の高周波電界の空間分布を、その発生源とは非同期で計測し可視化するための要素技術を開発する。本開発により、車の衝突予防システムへの搭載が進むミリ波レーダや、第5世代(5G)移動通信システム関連機器、あるいは、テラヘルツ波帯で動作するアンテナ集積デバイスを、それら機器が置かれるリアルシチュエーションの元で評価可能とするための基本技術が確立され、幅広い分野への波及効果が期待できる。
U.開発項目
(1)非同期計測技術の確立
 目標とした対象周波数レンジを上回る1 GHz〜300 GHzの3Dプローブを開発し、SN比に制限される位相計測の標準偏差を実証し理論限界を達成するとともに、サンプリング定理を満たす空間分解能を達成する新アルゴリズムを開発した。また、24 GHz帯・77 GHz帯にてFMCW信号を対象とした近傍界の可視化と遠方界の推定を実証し、最終目標を達成した。
(2)多次元計測プローブの開発
 目標の4倍の感度である最小電解強度0.1 V/mのセンサヘッドで、対象周波数レンジ300 GHz、中心間距離測定精度10 μm以下、挿入損失2.1 dB以下、相対光学軸誤差2 deg以下の面合わせ調整不要な3Dプローブを開発した。
(3)実用化に向けた取組み
 要素技術開発段階にも関わらず、新構造のプローブを搭載した可搬型装置を開発し、その実用化に向けた検討を推進するため大学発ベンチャーを立ち上げるなど、当初の目標にはない成果を達成した。
V.評 価
 本課題は、マイクロ波からテラヘルツ波の高周波電界の空間分布を発生源とは非同期で計測・可視化する要素技術を開発し、車の衝突予防システムや第5世代(5G)移動通信システムに活用するものである。
 開発は、当初の課題であったセンサー結晶の高精度加工は、新素材を活用した独自構造プローブの開発に成功し、その後極めて順調に進捗し、24 GHz帯・77 GHz帯にてFMCW信号の可視化を実現した。
 さらに、新たな計測アルゴリズム、垂直入射計測法を確立して可搬型装置をも開発し、大学発ベンチャーを立ち上げている。5G・6G通信や車載レーダのミリ波・テラヘルツ波の可視化など、企業と連携して応用展開に向けた検討も開始しており、要素技術の開発目標を大きく越える成果を上げていると高く評価できる。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。[S]