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資料4

開発課題名「原子核乾板を用いた高精度宇宙線ラジオグラフィシステムの開発」

(平成28年度採択:最先端研究基盤領域 先端機器開発タイプ)

チームリーダー :  中村 光廣【名古屋大学 未来材料・システム研究所 高度計測技術実践センター 教授】
サブリーダー :  鈴木 敬一【川崎地質株式会社 戦略企画本部 技術企画部 課長】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  川崎地質株式会社、富士フイルム株式会社、株式会社サイエンスインパクト
T.開発の概要
 火山、空洞調査、密度測定、老朽化診断などのさまざまな用途に展開するための原子核乾板を用いた高精度宇宙線ミューオンラジオグラフィシステムの開発を行う。具体的には、本計測原理の限界性能に肉薄する高精度を目指し、原子核乾板の乳剤製造、乾板塗布、照射、現像、読み取り、解析を行うためのトータルシステムを構築・性能向上を行い、並行してニーズや適用可能性のある領域での試験、評価、改良を繰り返し、開発装置の実証を行う。
U.中間評価における評価項目
(1)照射口径・露出時間の拡張
 塗布装置については、自動塗工機を用いた試験を行い、目標の均一性を実現した。また、さらなる高速化が見込める読み取り装置の設計を完了した。
 原子核乳剤については、飛跡保存性が従来の3倍程度(30 ℃、3ヶ月程度)に改善した。
(2)原子核乾板の性能向上
 シミュレータを活用した予測ツールを開発し、統計精度の範囲内での観測結果との一致を確認した。
(3)実証活動
 ピラミッド内部の未知の空間を発見したほか、原子炉底部撮像の可能性を検討した。また高炉の内部構造やトンネル上部の地質調査などの測定を行い、データの検証を行った。
V.評 価
 本課題は、要素技術プログラムで開発したオンリーワン技術である原子核乾板を用いた宇宙線ミューオン透視技術を、さらに高精度のトータルシステムとして開発し、火山などの大型構造物やインフラなどの分野への本格的展開を図るものである。 各装置・システムについては目標を達成しており、順調な進捗である。さらに、実証活動については、エジプトのクフ王のピラミッドで、これまで知られていなかった空洞構造を発見して、著名な国際雑誌に論文発表を行うなど、社会的にもインパクトのある成果を得ていることは高く評価できる。
 今後は、高精度化や適用範囲の拡大に向けて、原子核乳剤改良による飛跡保持能力改良をはじめ、画像処理・分析システムなどの技術開発を着実に進めつつ、さらなる成果の実現に向けて開発を積極的に推進すべきである。[S]