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資料4

開発課題名「オールインワン化学発光顕微鏡システムの開発」

(平成28年度採択:最先端研究基盤領域 先端機器開発タイプ)

チームリーダー :  永井 健治【大阪大学 産業科学研究所 教授】
サブリーダー :  土屋 秀治【株式会社東海ヒット 代表取締役】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  株式会社東海ヒット、東京大学
T.開発の概要
 励起光の照射を必要としない化学発光によるイメージングは、励起光が必要な蛍光イメージングでは困難な、光感受性細胞や光照射に弱い細胞の長時間観察および、複数の光遺伝学的ツールによる細胞操作技術との併用も可能にする。しかし、これらを簡便に実現する顕微鏡システムが実用化されていないため普及が進んでいない。本課題では、完全遮光状態で発光基質を自動的に安定供給するだけでなく、薬剤刺激も行うことができ、さらに任意の時空間パターンで光摂動を与えることが可能なオールインワン化学発光顕微鏡システムを開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)化学発光顕微鏡の各要素技術開発
 実験室内点灯状態でバックグラウンド0.22±0.03光子/秒の遮光を実現し、発光基質を1時間以上連続投与可能な自動投与・灌流装置を開発した。また、3時間以上フォーカスがずれずに観察可能とし、さらに、2色の波長による任意の時空間パターンで光刺激可能なシステムを実現した。化学発光3Dイメージングを実現するBLINCH法の開発では、生細胞のホログラム画像の取得と化学発光断層像の再構成に成功した。このように、化学発光顕微鏡の要素技術開発における中間目標は、すべて達成した。
(2)化学発光プローブの開発
 国内外の知財権に抵触しない新規化学発光プローブ開発のために、遺伝子の候補を4種まで絞り込み解析中であるが、時間切れでルシフェラーゼ遺伝子のクローニングまでには至らなかった。
(3)オールインワン化学発光顕微鏡の設計
 基本設計図が完成し、中間目標を達成した。
V.評 価
 本課題は、要素技術タイプで開発した高光度化・多色化を図った化学発光イメージング技術をベースに、光遺伝学との併用可能かつ3Dイメージング可能なオールインワン化学発光顕微鏡システムを開発するものである。
 オールインワン化学発光顕微鏡の要素技術開発は、化学発光プローブ開発の出発点となる独自ルシフェラーゼの遺伝子クローニングで遅れが出ているものの、その他はすべて順調に進捗し中間目標はすべて達成している。
 今後は、独自のルシフェラーゼに基づく化学発光プローブ群の開発・知財化を早期に実現し、オールインワン化学発光顕微鏡システムを実用化するとともに、様々な応用例の蓄積を通じて蛍光から発光への切替えの有効性を学会等に示すなど、開発を着実に実施すべきである。[A]