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資料4

開発課題名「原子解像度顕微鏡で得られる超高速分子動画の自動化解析技術の開発」

(平成28年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  原野 幸治【東京大学 総括プロジェクト機構 特任准教授】
サブリーダー :  古河 弘光【株式会社システムインフロンティア 取締役・副社長】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  株式会社システムインフロンティア
T.開発の概要
 超高速原子分解能透過電子顕微鏡で得られる有機分子の2次元動画像から、その3次元動的構造を自動的に決定できるソフトウェアの開発を行う。高速カメラによって得られる大量の電子顕微鏡動画とシミュレーションでの分子の動きを関連づけることで、時系列で変化する分子の動きを3次元的に観察できる。これにより、分子の配座変換過程や化学反応の解析、さらには結晶化過程の追跡など、基礎研究から工業プロセス管理まで幅広い波及効果が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)撮像素子からのデータ読み出し方法の確立
 CMOS、CCDカメラの連続自動撮影は、CCDおよびCMOSカメラによる最大10枚/秒において連続で1000枚以上の画像取得を達成した。汎用フォーマットへの変換は、外部処理が容易なtif画像形式で取り出し可能であることを確認した。読み出し時間も1600枚の画像に対してUSB経由で10分程度と、想定される利用目的に対応可能な速度であることを確認した。
(2)TEM動画を高解像度化する処理手法の開発
 原画像の利用効率向上は、超高速撮像素子での撮像検討の結果、観察時間内における担体のドリフトが極めて小さいことが明らかとなり、原画像を全て解析に利用できている。位置合わせも、超高速撮像素子におけるドリフトの影響を考慮する必要がないため、原画像の動画で目標の位置合わせ精度を達成した。処理速度は、CMOSカメラ撮影の1分のTEM動画について、TEM撮影から画像取り出し、ドリフト補正、およびフィルタリングなどの補正を行い、動画ファイル取得に24時間以内で可能とした。
V.評 価
 本課題は、カーボンナノチューブ末端などに分子を結合し、高速CMOSカメラにより取得した1000枚以上の運動中の分子TEM像を解析することによって、分子構造を原子分解能で決定する自動化解析技術を開発するものである。
 開発は着実に進捗しており、世界的にもまだ導入が少ない最新高速カメラであるが問題なく早期の撮像データの収集、並びに得られる知見や課題を把握している。今後、TEM原画像のさらなる質の向上を考慮しつつ、より複雑な分子での画像重ね合わせによるS/N比向上のためのアルゴリズムを固め、論文、学会発表等を積極的に進めることによって、共同研究への展開を期待したい。さらに、ハードウェア、ソフトウェアのGUI(Graphical User Interface)と組み合わせた知財化の検討も念頭におきながら、開発を着実に推進すべきである。[A]