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資料4

開発課題名「難分析核種の高感度分析のための多色イオン化光源の開発」

(平成28年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  坂本 哲夫【工学院大学 先進工学部 教授】
サブリーダー :  奥村 丈夫【株式会社日本中性子光学 代表取締役】
中核機関 :  工学院大学
参画機関 :  株式会社日本中性子光学、名古屋大学、日本原子力研究開発機構
T.開発の概要
 福島原発事故により放出された放射性物質のうち、「難分析核種」の高感度分析のための多色イオン化光源を開発する。難分析核種はγ線ではなく、α線またはβ線を放出するが、その検出が困難となっている。これらは今後、環境中エアロゾルや廃炉作業に伴うダストとして発生し、吸入すると長期に渡り内部被曝が懸念されるため、環境中の動態解明が急務である。開発する多色イオン化光源は高繰り返し率・波長可変・多色発生が可能なことを最大の特長とし、これにより極めて選択性の高い核種選択イオン化・質量分析イメージングを世界に先駆けて実現する。
U.中間評価における評価項目
(1)多色イオン化光源
 イオン化光源のサイズについては、当初目標の寸法0.8 m×1.2 m×0.5 m、重量20 kg以内に対して小型、軽量化を達成している。高繰り返し率化も目標を達成し、波長自動調整・制御については、波長計によるTi:Sa出力のリアルタイムモニタリングと、回折格子角度設定へのフィードバックにより実現した。
(2)共鳴イオン化質量イメージング
 質量イメージング装置のイオン光学系の高感度化改良は、Zr試料の1色共鳴時において3.12倍と目標を上回る感度向上を達成した。第1世代多色光源の質量イメージング装置への実装は、1色または2色イオン化信号を検出し、視野30 μmでのZr粒子のイメージングに成功した。さらに、実粒子でのイメージングに成功している。
V.評 価
 本課題は、難分析核種を選択的にイオン化して高感度で質量分析するための多色イオン化レーザー光源の開発である。光源は高出力化、高繰り返し率、レーザー発振の時間的ばらつきの低減、短時間での波長の自動設定など全て目標を達成している。質量イメージングについてもイオン信号強度の増大など目標を上回って達成している。これらの成果を用いて実粒子による多色イオン化イメージングにも成功しており高く評価できる。
 今後、放射性物質イメージングについて、廃炉、除染、核廃棄物のみならず、農林水産や環境の分野で現実の試料を対象とするなど、開発を着実に実施すべきである。[A]