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資料4

開発課題名「スマートサーフェス設計を戦略とした革新的分離解析技術の開発」

(平成28年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  秋元 文【東京大学 大学院工学系研究科 講師】
サブリーダー :  伊藤 正人【(株)日立ハイテクサイエンス 那珂事業所光学設計部 主任技師】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  株式会社日立ハイテクサイエンス、慶應義塾大学
T.開発の概要
 温度応答性クロマトグラフィーは、温度により担体の疎水性相互作用・静電相互作用・特異的分子認識を制御することができるため、温度変化を利用して、有機溶媒を用いることなく水系で、低分子薬物、ペプチド、タンパク質などの分離を制御できるシステムである。本課題では、ライフサイエンス分野の研究を発展的に加速させることを目指し、分離後物質の生理活性・機能を維持しつつ、高選択性・高回収率・高速分離・大容量分離を実現する分離解析技術を開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)タンパク質分離に向けた検討
 温度応答性の高分子誘導体修飾シリカビーズ(タンパク質分離担体)の調製は、疎水性相互作用、静電相互作用等を制御可能な13種の担体を調製した。タンパク質分離担体を用いた各種の吸着/脱離について目標とした回収率を達成し、回収後の活性についても問題ないことを確認している。カラム恒温槽については使用する温度範囲の装置試作を終えた。
(2)細胞分離に向けた基礎検討
 温度応答性高分子誘導体修飾ガラス平板(細胞分離担体)の調製については、疎水性相互作用、静電相互作用(カチオン)を制御可能な担体を調製した。細胞との相互作用を増大・制御させるため3種類の異なるナノ構造(平板・凹凸形状・マイクロファイバー)を設計した。細胞分離担体上でのヒト骨髄由来間葉系幹細胞等の接着性確認については、温度依存的な疎水性相互作用および静電相互作用の制御による表面への接着/脱離および回収後の高い生存率を得ることに成功した。
V.評 価
 本課題は、物性の異なる温度応答性ポリマーを用いて、抗体医薬品等のタンパク質を分離するクロマトグラフィーの開発で、当初の予定通りの進捗をしており、目標を達成している。また、細胞分離においても細胞にダメージを与えない条件での分離に成功している。 水系溶媒だけで分離できることは、ユーザーにとって非常に魅力ある技術であり、今後は分離精度をさらに向上させるなど、本技術の優位性や適応範囲を明確化することが重要である。さらに、知財戦略についても十分検討しながら、着実に開発を推進すべきである。[A]