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資料4

開発課題名「太陽電池伝導キャリア分光システムの開発」

グリーンイノベーション領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成29年3月

チームリーダー :  宇治原 徹【名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授】
サブリーダー :  竹内 幸雄【株式会社VIC インターナショナル 代表取締役】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  株式会社VIC インターナショナル、MBS ジャパン株式会社
T.開発の概要
 従来の太陽電池開発では、光によって励起されたキャリアを如何に効率よく取り出すかが重要であったが、超高効率化が期待されている第三世代太陽電池においては、どのようなバンド構造においてどのようなエネルギーを持つキャリアを取り出すかを綿密に制御する必要がある。本開発では、太陽電池中の伝導帯バンド構造およびキャリアエネルギーを直接測定できる唯一の評価法として、伝導キャリアエネルギー分光システムを早期に開発する。これにより、超高効率太陽電池開発が加速される。
U.開発項目
(1)NEA形成装置の開発
 NEA形成装置を開発し、外部量子効率1%±0.1%の再現性でNEA表面を形成出来ることを確認した。また、GaAs、GaP、GaAsP、InGaAs、GaN、Si、SiCの材料で1nA以上の電子放出を確認し、最終目標を達成した。
(2)低エネルギー電子分光装置の開発
 エネルギー範囲10meV〜80meV、分解能7meV以下、測定誤差±1meV以下、角度分解能0.04度の電子分光装置を開発し、ほぼ最終目標を達成した。
(3)分光感度測定系の確立
 照射光波長300〜1800nm、スポットサイズ55.5μmの分光感度測定系を確立し、最終目標を達成した。
V.評 価
 本課題は、伝導帯構造およびキャリアエネルギーを直接測定、評価できる伝導キャリアエネルギー分光システムの開発であり、高効率太陽電池開発への活用が期待されるものである。開発は極めて順調に進捗し、装置を市販できる体制まで実現したことは高く評価できる。また、他の方法では得られない伝導帯内の緩和時間の測定などは、固体物理の基本的現象の解明にも極めて有用な知見を与えるものと期待される。
 事業化については、次世代型太陽電池の事業展開が不透明な部分があるものの、開発技術のポテンシャルの高さを考えると他分野への応用も十分考えられ、今後この装置の有効性、信頼性を示しながら、普及を図ることを期待する。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。 [S]