資料4

開発課題名「マイクロ秒分解能・液体界面現象モニターの開発」

(平成27年度採択:最先端研究基盤領域 先端機器開発タイプ)

チームリーダー :  酒井 啓司【東京大学 生産技術研究所 教授】
サブリーダー :  里見 秀人【京都電子工業(株) 技術開発本部 新規事業開発部 マーケティング室 室長】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  京都電子工業(株)、日本ペイントホールディングス(株)、(株)リコー
T.開発の概要
 微小液滴を射出し、非接触誘電プローブによりその力学応答を測定することで、時々刻々に変化する液体の表面エネルギーをマイクロ秒の分解能で計測する表面・界面エネルギーモニターを開発する。さらに、複数のノズルにより射出される異種液体の微小球が衝突融合することによって開始されるさまざまな反応現象を、マイクロ〜サブミリ秒の時間領域における光学測定で追跡する機能を付加する。本装置により、近年用途が拡大しているインクジェットなどの微小液体の動態と反応に関する詳細な知見が得られ、関連分野の研究開発の促進が期待できる。
U.中間評価における評価項目
(1)液体界面現象モニターの開発
 大気圧低圧環境下において、液滴の位置誤差1 μm以下で搬送距離200 mmを達成した。また、水の表面張力及び異種液滴の界面張力は 文献値に比しそれぞれ1 %以上及び3 %以上の精度が得られ、中間目標を上回った。
(2)液滴振動解析ソフトウェアの開発
 直径20 μmの液滴を自動追尾し、リアルタイムで表面張力の計測を実施し、グラフ化を可能にした。また、異種液滴の画像取得後3分程度で界面張力の計測を可能とし、中間目標を上回った。
(3)その他
 相溶性の異種液滴を融合し、高次構造液滴を作製する高機能マイクロカプセル作製ツールとして本技術を応用展開する可能性も示唆された。
V.評 価
 要素技術タイプで開発した独自の低圧チャンバー技術を発展させ、液滴ひとつずつの挙動を追跡しながら、搬送距離200 mmにわたり位置精度1 μm以下で表・界面張力を短時間かつ高精度に計測するなど、中間目標の全項目を上回る成果が達成された。 さらに本装置では、異種液滴衝突やゲル化反応などの短時間の表面現象解析に成功しており、材料や製品の製造過程の精密解析やマイクロカプセルの高機能化など、より広い分野への応用展開が期待できる。
 今後は、さらに開発を加速させ、早期に実用機を完成させるよう積極的に推進すべきである。そのため、製品の価格設定、市場マーケティング、用途開発等の事業展開に適した体制を構築し、海外展開も含めた事業戦略を明確にすることを期待する。[S]