資料4

開発課題名「非同期計測による高周波電界の空間分布可視化技術の開発」

(平成27年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  久武 信太郎【大阪大学 大学院基礎工学研究科 助教】
サブリーダー :  宮地 邦男【シンクランド(株) 代表取締役社長】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  シンクランド(株)、アークレイ(株)
T.開発の概要
 本課題では、自励発振器等から放射されるマイクロ波帯からテラヘルツ波帯の高周波電界の空間分布を、その発生源とは非同期で計測し可視化するための要素技術を開発する。本開発により、車の衝突予防システムへの搭載が進むミリ波レーダや、第5世代(5G)移動通信システム関連機器、あるいは、テラヘルツ波帯で動作するアンテナ集積デバイスを、それら機器が置かれるリアルシチュエーションの元で評価可能とするための基本技術が確立され、幅広い分野への波及効果が期待できる。
U.中間評価における評価項目
(1)個別プローブを用いた1次元・2次元計測の原理検証
 対象周波数レンジ80 GHz以下を目標とし、24 GHzを対象に原理検証を終えた。位相計測の標準偏差もSN比<32 dBにおいて理論予想と良い一致を示している。
(2)80 GHz以下に対応可能なEOセンサヘッド(DAST)の開発
 検出可能な最小電界強度については24 GHzにおいて0.22 v/mを達成し、加工後の結晶は95 %の信頼性で0.95±0.03 mmの寸法を確認し、加工精度も±0.03 mmであった。
(3)多次元計測プローブ評価法の確立
 当初の目標に対して、中心間距離計測精度16 μm、挿入損失測定精度0.5 dB、光学軸計測精度0.3 dB、並びに面合わせ測定精度0.02〜0.08以下を達成している。
(4)1Dプローブ試作
 加工したEOセンサーヘッドを用いてプローブを試作し、発振周波数77.7 GHz、出力パワー55 mWのGunn発振器にホーンアンテナを組み合わせ試作プローブによる測定を試み、振幅分布、位相分布それぞれの空間分布の可視化に成功している。
V.評 価
 マイクロ波からテラヘルツ波を非同期で計測し電界分布を可視化する独自性の高い技術で、自動車等が発する電磁波の可視化で安全・安心社会への貢献が期待される。
 研究開発は電界応答性、加工精度、三次元位置測定精度の向上や計測技法の工夫などで中間目標を達成し、電界と位相の空間分布測定の原理確認に成功するなど、製品化に必要な個々の要素技術を着実に積み上げている。
 今後は、知的財産権の確保や標準化についても戦略的に進める必要がある。また、現在のミリ波の開発にとどまらず、テラヘルツ波も含めたさらなる応用分野の開拓を目指すべきである。本開発課題は、中間目的を達成しており、当初の計画に沿って推進すべきと考える。[A]