資料4

開発課題名「高感度広域ガンマ線望遠鏡の開発」

放射線計測領域 実用化タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成28年3月

チームリーダー :  谷本 和夫【明星電気(株) 宇宙防衛事業部 事業部長】
サブリーダー :  佐々木 真人【東京大学 宇宙線研究所 准教授】
中核機関 :  明星電気(株)
参画機関 :  東京大学
T.開発の概要
 被災地域の復旧・復興のため、放射線量の迅速かつ高信頼度・高精度・高感度な撮像計測を可能とし、大きな感受面積をもつ放射線モニター検査装置を開発する。製造工程、保管倉庫、搬送中のトラック・コンテナ、廃棄物置場といったまとまった広域の範囲に混在している、製品・食品・土壌等に含まれる放射性セシウム起源のガンマ線を迅速に検出できるようになる。これまでに開発した、太陽光追尾分光方式によるCO2計測や、大気汚染監視用の撮像ライダー装置(3D-RTIL)に用いたファイバー技術をもとに、シンチレーションファイバーに入射したガンマ線のコンプトン散乱による電子への相互作用を高精度かつ高感度に撮像する装置を開発する。平成26年度中にプロトタイプ機を完成し、応用モニター試験を実施する。平成27年度には試験の結果を反映し、製品化試作の完成を目指す。
U.開発項目
(1)データ処理
 信号信頼度は目標の95 %を大きく超えて達成。処理速度は800Mバイト/秒を確認し、目標値(400Mバイト/秒)を大きく上回った。方向決定精度は、コリメータだけで2.5度に制限できることを確認。伝送データ率は無線により184.1 Mbpsを確認し、画像更新頻度は2.5 Hzでフル画像を遠隔監視可能。それぞれ目標を上回った。また、従来のアンガー法とシンチロッド両端読み出しによるコンプトン撮像法を融合して撮像する、これまでにない新たな解析手法を開発した。
(2)要素開発
 市販のシンチレーションファイバ(SciFi)を使用せず、独自に鏡パイプ被覆シンチロッドを開発。コスト効率よくSciFiの4〜5倍の効率を実現した。撮像装置の解像度は目標100 μm の1/20の4.7 μm (出力面)を、撮像頻度も目標100 Hz の2 倍の200 Hzを達成し、他項目も数値目標を達成した。光電撮像管については製作が遅れ、既存の光電撮像管を組み込んでの評価となった。組立部材については、外形 1150 cm×575 cm×1680 cm(目標1200 cm×1000 cm×1700 cm)及び重量 373 kg(目標400 kg)を達成し、可搬性も優れた仕様とした。
(3)組立・駆動
 シンチロッドの整列精度は0.05度(目標は0.5度以下)を達成。鉛ブレードの走査速度は目標の10度/秒以上を、安定度は0.2度の再現性を確認した。組立時間は30分〜1時間、消費電力は189 W、防水保護3等級(IEC)以上という成果をそれぞれ達成。
(4)現場実証
 大型光電撮像管の製作が遅れたことにより、既存の光電撮像管を組み込んでの、汚染現場でなく実験室における実地試験となった。感度性能は1秒で2.5 %を、撮像性能は視野45度×360度を達成。安定性能については0.2度の自動焦点精度において10.4 mm @3 m(目標5 cm @3 m以下)を達成。連続運転400時間以上、稼働効率99 %、経年変化0.5 %/400時間を確認した。
V.評 価
 本開発は、放射性Csで汚染した物質を遠距離から特定し、その放射線線量率を短時間で信頼性高く評価できるγ線測定装置を作製・実用化するものである。そのため、本チームが従来開発してきたγ線望遠鏡の各要素技術を改良・発展し、より高性能な装置を開発することに主眼が置かれ、新たなγ線撮像法、高効率シンチロッド、自動焦点化機構の開発も行った。しかしながら、γ線検出部分の光電撮像管の製作が遅れ、既存の光電撮像管を組み込んでの評価に終わったのは残念である。また、開発装置の性能評価については各要素技術について詳細な検討・評価が行われたが、開発期間内にγ線測定装置としての総合的評価の検討が少なく、さらに被災地に持ち込んでの具体的な事象についての評価が行われなかったことは、実用化に向けて今後の課題となる。
 本開発は、当初の開発目標を達成したが、本事業の趣旨に相応しい成果は得られなかったと評価する[B]。