資料4

開発課題名「複雑形状食品の放射能検査装置の開発」

放射線計測領域 実用化タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成28年3月

チームリーダー :  谷口 一雄【(株)テクノエックス 代表取締役】
サブリーダー :  松浦 秀治【大阪電気通信大学 電気電子工学科 教授】
中核機関 :  (株)テクノエックス
参画機関 :  大阪電気通信大学
T.開発の概要
 複雑形状の魚介類等の放射性セシウムの位置有感スクリーニング測定装置を開発する。第1段階は1辺3.8 cmのCsI検出素子による12×12個の検出マトリクスを構成し、5 cmメッシュの形状測定と放射性セシウム濃度分布測定による個体および位置識別検査を行う試作機を平成25年度中に完成させ、80 秒測定で検出下限25 Bq/kgを目指す。第2段階の平成26年度から、位置分解能1 cmの検査装置を開発する。1辺80 mmのCsI検出器を内部で8×8個の小型検出素子に分割した検出器を作製する。これを用いた1 cmメッシュの48×48個検出素子による位置敏感検出器を開発し、複雑形状の多数の食品を個別かつ同時検査可能な2次元放射性セシウム検査装置を平成26年度中に試作する。被災地漁港での試作機の実証試験を行い、水揚げ時点でのスクリーニング検査用として平成27年度中の製品化を目指す。
U.開発項目
(1)汎用位置分解能検査装置
 測定時間80秒での検出限界(LLD)は16.3 Bq/Kg (バックグラウンド80秒)を、バックグラウンド測定時間を別途40000秒としたときのLLDは12.2 Bq/Kgと目標を達成した。ソフト細分化(検出器メッシュを10×10に分割)による2次元分解能1 cm以下を達成したため、当初の目標を超えた分解能での個体識別も可能となった。
(2)高位置分解能48×48検出器検査装置
 測定時間80秒でのLLDは16.3 Bq/Kg(バックグラウンド80秒)〜12.2 Bq/Kg(バックグラウンド40000秒)を達成した。1 cmメッシュの検出素子を用いた検出器での放射性Csを検出する測定を達成し、これにより位置分解能1 cmを達成した。
(3)形状認識/濃度分布ソフト
 1つ1つの検出器の作るメッシュに対して、Catmull-Rom補間法を2次元に拡張したアルゴリズムを用いて、検出器メッシュを任意分割(10×10分割がデフォルト)による細分化ルーチンを開発し、実用化した。また補間点の周りの検出器マトリクスデータを用いて2次元Savitky-Golay法を拡張した同時平滑化アルゴリズムおよびルーチンを開発した。
(4)性能評価
 モデル試料を使い、想定している系に合わせて測定時間10秒でのLLDを評価すると、バックグラウンド測定80秒で7.2 Bq/Kgを、バックグラウンド測定を別途40000秒行えば5.2 Bq/Kgを達成した。
(5)検出器素子評価システム
 検出器評価システムを用いて、分割検出器の評価とそれに基づく改良を行った。それを通じて検出器の高計数率対応などの性能アップや、新たな検出器、小型分割検出器やマルチコリメータ方式分割検出器の開発を実現した。
(6)実証実験
 実証実験については、現地ニーズが精密測定よりも簡易分析を望んでいる点などから最初に開発したPrototype0 Legumesを、福島県の漁協に持ち込み、ユーザーによる実証実験と改良・応用提案の収集を行った。これらを通じて機器換算係数の形状効果理論計算や、さらにはLegumesの事業化及び応用機器の実用化など、事業化面の推進で大きな成果が得られた。
V.評 価
 本課題は、被災地から要望が強い複雑形状食品を非破壊で検査できる装置の開発で、複数の検査装置を市場のニーズに応じて開発するとともに、近い将来必ず必要とされてくる精密測定の検査装置を精力的に開発した。特に、現地ユーザーが望んでいる簡易測定装置については、開発者自らが評価するとともに現地ユーザーにより実証・評価を行うことで、目標以上の性能を持った検査測定装置を開発しさらには事業化にも成功したことは特筆すべきことである。開発から生み出された放射線測定に関する新たな技術は、食品中の放射能測定以外に他の分野の放射線測定に組み入れることが可能で、放射線測定技術の新たな展開が期待される。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。