資料4

開発課題名「高エネルギー分解能・高スループットの国産放射能測定検査装置」

放射線計測領域 実用化タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成28年3月

チームリーダー :  竹内 宣博【(株)千代田テクノル 大洗研究所 常務取締役 大洗研究所長】
サブリーダー :  吉川 彰【東北大学 金属材料研究所 教授】
中核機関 :  (株)千代田テクノル
参画機関 :  東北大学、(株)C&A
T.開発の概要
 食品や焼却灰等の放射能を測定する検査装置には、エネルギー分解能・感度が低いNaI(Tl)シンチレータや測定時間が長いGe半導体等を用いた検出器がある。本課題では、エネルギー分解能・感度が高いSrI2(Eu)結晶を大型化・高品質化したものを搭載した測定時間の短い放射能測定装置を開発する。東北大学およびC&A社が独自開発の種結晶成長型ブリッジマン法を用いて、SrI2(Eu)結晶の大型化・高品質化の技術を確立し、封缶技術も含めて事業化する。SrI2(Eu)搭載放射能測定装置の開発・校正方法の検討等を千代田テクノル社が行い、平成26年度中にプロトタイプ機器を作成し、平成27年度中に全数検査を高スループットで検査できる装置を製品化する。
U.開発項目
(1)原材料の最適化・結晶パッケージの最適化
 従来の原料の価格に対して、40 %程度以下まで価格を抑えることに成功した。また1インチ径でのエネルギー分解能(FWHM)は662 keVで3.8 %となり、目標を達成した。この結果、安定的に最終目標をクリアするエネルギー分解能を有する結晶育成、研磨、パッケージが可能になった。
(2)結晶の2インチ径量産化・結晶パッケージ量産化
 2インチ径のクラックフリーのSrI2(Eu)単結晶の育成に成功し、さらにクラックフリーの結晶の育成歩留りも70 %以上となった。加えて、エネルギー分解能(FWHM)は662 keVで3.8 %に達し、当初の目標であった4 %台以下を達成した。
(3)2インチ径結晶を用いた装置の開発・総合評価
 1.5インチ径SrI2(Eu)を搭載した試作機を用い、径試料容量1 Lのマリネリ容器に試料重量500 g(充填率:1.0)を入れ検出下限を求めたが、測定時間1000秒で10 Bq/kg以下を達成することはできなかった。しかし、鉛遮蔽を3 cm、2インチ径SrI2(Eu)を用いることで目標を達成できる見込みである。
(4)現地での実証試験
 SrI2(Eu)を用いた測定器の応用として、1インチ径SrI2(Eu)を用いた空間放射線測定機を製作し、福島で環境の放射線スペクトル測定を実施した。
V.評 価
 本開発は、放射線検出器及び測定・解析装置を全て純国産で製造するべく、従来普及されていない検出器を新たに開発して高性能かつ安価な放射線測定装置を市場に出すことを目的とした。原材料の最適化、独自の結晶育成法によるSrI2(Eu)の量産化、高性能シンチレータを用いた測定装置の開発と実用化など、多くの技術開発を行うとともに条件の最適化を実現し、ほぼ全ての項目にわたり最終目標を達成した。その結果、本装置にかかわる全ての要素技術と機器を国産化したことの意義は極めて重要であり、高く評価できる。また、得られたシンチレータ技術については、今後原子力防災などセキュリティ対策向けへの展開も期待できる。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。