資料4

開発課題名「「次世代質量イメージング用UVマイクロチップレーザー」の実用実証化 」

最先端研究基盤領域 実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成28年3月

チームリーダー :  古川 保典【(株)オキサイド 代表取締役社長】
サブリーダー :  平等 拓範【自然科学研究機構 分子科学研究所 分子制御レーザー開発研究センター 准教授】
中核機関 :  (株)オキサイド
参画機関 :  自然科学研究機構、新日鐵住金(株)、工学院大学、東京工業大学
T.開発の概要
 芳香族系有機物・高分子の分析や含ハロゲン・ヘテロ有機・無機物質の分析へのUVレーザー応用を目指し、質量イメージング装置および二次イオン質量分析(SIMS)装置で一般的なICF70 フランジへ簡便に取り付け可能な超小型パルスUV光源の製品化を目指す。開発するUVマイクロチップレーザーは、高輝度、高パルス出力、高繰返し、超小型であることを特徴とするため、先端鉄鋼材料や有機薄膜太陽電池などの質量分析において、光イオン化効率を最大に利用することが可能である。本開発によって高感度かつ非破壊的光イオン化による質量分析におけるUVマイクロチップレーザーの有用性を世界で初めて実証し、実用化する。
U.開発項目
(1)UVマイクロチップレーザー
 基本性能は、繰り返し周波数1 kHzで基本波(1064 nm)出力1.1 mJ、SHG(532 nm)出力0.5 mJ、FHG(266 nm)出力0.221 mJ、パルス幅218 psが得られ尖頭出力1.01 MWであり、目標達成できた。ジッターについては、電源の制約により外部トリガーでの評価ができなかったが内部トリガーにて37 ns@363 W、105 ns@113 W(励起パワー)が得られている。信頼性、仕様については、100 Hz量産プロト機にて0.28 mJで3時間以上の安定動作を確認しており、量産機(266 nmと355 nm両対応)にて63(W)x63(H)x112(L)mmのヘッドサイズを設計し、量産プロト機の重量は1.8 kgであった。
(2)VUV発生用UV(355 nm)マイクロチップレーザー
 基本性能は、繰り返し周波数100 Hzで基本波(1064 nm)出力3 mJ、SHG(532 nm)出力1.15 mJ、THG(355 nm)出力0.65 mJ:パルス幅170 psが得られ尖頭出力3.8 MWであり、目標を達成している。信頼性、仕様については、100 Hz量産プロト機にて1.7 mJで0.5時間以上の安定動作が確認され、(1)と同様の量産機として設計、重量は1.8 kgである。
V.評 価
 本課題は、2種類のレーザー(波長266 nmのUVマイクロチップレーザーと波長355 nmのVUV発生用レーザー)の開発、並びにそれらを用いた3つの分析評価技術(レーザーイオン化(SNMS)イメージング、光イオン化質量分析によるスペクトルライブラリーの集積、波長118 nmのVUV光によるガス分析)の開発が行われた。その結果、レーザー開発においては尖頭出力、発振波長、繰り返し周波数、パルス幅、ビームパターン、レーザー装置の大きさや重量などの開発目標をほぼ達成している。また、開発されたレーザーを用いた3つの分析評価技術の開発においても目標をほぼ達成した。開発されたレーザーの市場性を強固なものとするには、@SNMSの測定で必要とされる1 KHz以上の繰り返し周波数において安定した動作が得られるようにすること、A非線形光学結晶が受ける損傷をさらに低減させ、損傷を受けてもその部分の使用を容易に回避するような装置上の工夫が必要であろう。
 本開発では、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと考えられる[A]。