チームリーダー : |
森居 隆史【(株)生体分子計測研究所 取締役】 |
サブリーダー : |
安藤 敏夫【金沢大学 理工研究域数物科学系 教授】 |
中核機関 : |
(株)生体分子計測研究所 |
参画機関 : |
金沢大学
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- T.開発の概要
- 現状の高速原子間力顕微鏡(高速AFM)は、試料を走査するサンプルスキャン方式を採用しているため試料サイズに制限があり、これがアプリケーションの幅を著しく狭めている。本課題では、プローブスキャン方式の高速AFM用スキャナーを開発し、高速AFMを、単に表面形状観察装置という位置付けではなく、固液界面反応の動的解析装置として、生命科学分野にとどまらず工業材料一般にも広く適用できる汎用のツールとして進化させることを目指す。
- U.開発項目
- (1)着脱可能なカンチレバー固定法の開発
- Z方向走査時に共振周波数90 kHz以上を達成する易着脱可能なカンチレバー固定法を開発し、最終目標を達成した。本法によるZスキャナーの共振特性はカンチレバーを固定した場合とほぼ同等であった。
- (2)広域高速スキャナーの開発
- 被覆処理等により水濡れ、強酸等への耐性を有する広域・高速スキャナーを開発した。走査範囲X軸47 μm、Y軸52 μm、Z軸2 μmを確立し、最終目標を達成した。
- (3)プローブ走査方式の高速AFM装置の開発
- プローブトラッキング法を検討し、トラッキング範囲が広く、高振動抑制を有するプローブ走査方式の高速AFM装置を開発した。画像取得時のZ軸走査が大きい場合に生じるトラッキングエラーについては、高速AFMヘッドの試作を通じて改善し、高速AFM装置はほぼ完成した。最終目標はほぼ達成している。
- V.評 価
- 現行の高速原子間力顕微鏡(AFM)の@適用可能な試料系が限定される、AAFMと組合せる光学顕微鏡が制限される等の問題点を解決するため、プローブ走査方式・広域スキャナー搭載のAFMを開発することを目的とした要素技術の開発課題である。
プローブ変位を検出するトラッキング法、簡便に脱着可能なカンチレバーの固定法、広域高速スキャナーなどの要素技術の開発に加えて、それらを組み込んだ試作機の開発まで実施したことは高く評価できる。その結果、高速走査可能でユーザーフレンドリーなAFMとして製品化の目処をつけ、新たな学術的な知見だけでなく多様な生産現場への適用可能性も示した。
今後は、本成果を生かしてより高精度な計測を簡便に行えるプローブスキャン方式のAFMを開発するとともに、普及に向けた取り組みの加速を期待する。
本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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