資料4

開発課題名「ラボベース軟X 線光源用大開口・回転体集光ミラーの開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成24年10月〜平成28年3月

チームリーダー :  三村 秀和【東京大学 大学院工学系研究科 精密工学専攻 准教授】
サブリーダー :  橋爪 寛和【夏目光学(株) テクノロジーセンター 所長】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  夏目光学(株)
T.開発の概要
 高輝度ラボベース軟X線光源を最大限活用するためには、発散するX線を集めることができる大開口・回転体X線ミラーが有効である。しかし、理想的なX線ミラーには、シングルナノメートルの極限の精度が必要であるためこれまで実現されていない。本課題では、3次元ナノ精度加工、常温電鋳法、3次元形状評価法、追加成膜形状修正法を開発することにより、理想的な性能を有する回転体軟X線集光ミラーを世界にさきがけて実現するとともに、将来の軟X線顕微鏡開発を視野に入れ、X線ミラーの設計・作製・評価を行う。
U.開発項目
(1)3次元ナノ精度加工技術の確立
 加工・計測装置の高度化を図った結果、形状精度、粗さともに目標を達成した。
(2)3次元ナノ精度転写技術の確立
 電鋳法に基づく高精度転写プロセスを構築し、0.266 nm(RMS)の良好な表面粗さを実現した。測定限界と同等の50 nmレベルの精度で形状転写ができていることがわかった。上記プロセスの利用により、目標精度の回転楕円ミラーの試作に成功した。
(3)高精度回転体形状測定法の確立
 タイコグラフィー位相回復法を用いた3次元形状測定装置を新規に開発し、絶対的な測定精度が40 nm(P-V)であることを確認した。
(4)3次元ナノ精度形状修正法の確立
 イオンビームスパッタ法による内面形状修正装置を開発し、内面修正が可能であることを実証した。
(5)回転楕円ミラーの性能評価
 高次高調波軟X線光源の評価により、波長13〜20 nmの複数の波長をもつEUV光を半値幅500 nmまで集光可能であることを確認した。またSPring-8のビームラインにおいて、ミラーを用いて波長4 nmの軟X線を200 nmに集光可能であることを示した。今後さらに検討を進めることで、目標であった100 nm集光の実現を目指す。
V.評 価
 本課題は、軟X線の強度密度を飛躍的に向上させるために、発散する軟X線光源をナノレベルまで集光するミラーを開発するものである。具体的には、軟X線回転楕円ミラーの作製プロセスの構築、およびラボベースの軟X線源を用いた集光特性の評価により、本回転楕円ミラーが軟X線集光に利用可能であることを実証することを目的とした。その結果、3次元ナノ精度加工・転写技術および修正法を確立しており、開発目標を達成している。また放射光施設を用いた評価では、集光サイズが目標に到達していないものの、今後の展開が期待される結果が得られた。本開発は、高品質軟X線源など様々な活用が期待されており、日本発のオンリーワン技術として高く評価できる。
 以上の結果を総合的に評価すると、本開発は当初の開発目標をほぼ達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたものと認められる[A]。