資料4

開発課題名「サブテラヘルツ帯アクティブイメージング用照明系の開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成24年10月〜平成28年3月

チームリーダー :  松山 賢【東京理科大学 総合研究院火災科学研究センター 准教授】
サブリーダー :  清水 直文【日本電信電話(株) 先端集積デバイス研究所 ソーシャルデバイス基盤研究部 主任研究員】
中核機関 :  東京理科大学
参画機関 :  日本電信電話(株)
T.開発の概要
 火災現場において、消火活動や被害者救助をサポートし、目標地点を可視化する技術が求められている。サブテラヘルツ帯電磁波は、煙霧中で透過性が高く、煙の立ち込めた地点の可視化に最適な電磁波である。従来この周波数帯はパッシブイメージングが主流であったが、火災現場においては高温の物質や煙が熱輻射源として支配的であるため、明瞭な被写体の像を得ることが困難であった。この課題の解決にはアクティブイメージングが必須であり、本課題では、そのキーコンポーネントである、低干渉性で十分な輝度を有する照明用テラヘルツ波発生器の開発を目指す。
U.開発項目
(1)アレー照明系の開発
 光フィルタの透過中心周波数、帯域幅の制御により、中心周波数200-1000 GHz、帯域幅50-400 GHz可変のインコヒーレントサブテラヘルツ波がフォトミキサから放射されることを示した。またアレー出力換算で目標を上回る出力が得られ、照明器から60 cm以上の範囲までテラヘルツ波が到達していることを確認した。
(2)模擬火災環境及び評価系の構築
 奥行1.7 m以上の区画を2段構成とし、温度と煙濃度の制御を可能にすることで、最大温度200 ℃以上および最大煙濃度(減光係数Cs値)9.0以上で設定条件を維持できる装置を構築した。
(3)高輝度インコヒーレント照明の効果確認
 サブテラヘルツ波を特に強く吸収するガスの影響が避けられる周波数帯を明らかにした。9台のフォトミキサで構成されたアレー照明系から放射されるインコヒーレントサブテラヘルツ波で1.2 m先の被写体を照射した状態で、煙濃度がもっとも高いCs=9において信号対雑音比13 dBで被写体像が得られることを示した。
V.評 価
 本開発課題の目的は、火災現場の煙霧のため可視光では見えない物体をテラヘルツカメラで見るために必要なサブテラヘルツ領域の照明光源を開発することである。それぞれの開発項目で目標が達成されており、特にカメラと被写体の距離が60 cm以上の目標に対して、模擬煙霧空間で1.2 mまでの観測を実現している。
 今回開発したサブテラヘルツ領域の光源はレンズを使った局所照明であるので、今後はもう少し広い範囲を照明する方式やそれに適した光源の開発など、実用性能を有する装置の開発に向けた検討が望まれる。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。