資料4

開発課題名「マイクロ秒分解能・表面張力スペクトロメータの開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成24年10月〜平成28年3月

チームリーダー :  酒井 啓司【東京大学 生産技術研究所 基礎系部門 教授】
サブリーダー :  里見 秀人【京都電子工業(株) 開発推進部・製品企画課 課長】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  京都電子工業(株)
T.開発の概要
 液体表面張力の時間変化を10 μ秒の時間分解能で追跡できる表面張力スペクトロメータを開発する。この時間分解能はインクジェットや高速印刷、噴霧など、現在の重要な微小液体プロセスの典型的な時定数であるが、従来の手法では高々1ミリ秒の分解能が限界であった。本課題では、チームリーダーの独自開発による微小液滴ハンドリング技術により、必須の物性値である「時間変化する表面張力」の測定を可能にし、当該分野における装置設計や現象解析に強力なツールを提供する。
U.開発項目
(1)表面張力の時間スペクトル測定の実現
 表面張力の時間分解能は、高次振動モードの適用により、当初の目標の10 μ秒を越えた。また、表面張力の測定精度については最終目標を安定して実現した。さらに、測定時間領域は液滴飛翔の超安定化技術により10ミリ秒までの観察が可能となり、最終目標を大きく上回った。
(2)連続液滴生成からの一滴抽出技術の確立
 液滴連続生成周波数20〜120 kHzの領域で直径10〜50 μmの液滴を任意に抽出することに成功し、最終目標を達成した。
(3)散乱パターン予測の実現
 液滴による光散乱パターンから空中を飛翔する液滴の直径及び液滴間隔を高い精度で予測することが可能となった。
(4)顕微ストロボ測定ユニットの完成
 時間分解能0.5 μ秒、周波数帯域2 MHzの動画観察可能な高速顕微ストロボ測定ユニットを作製した。
V.評 価
 液滴形成要因となる表面張力を測定可能な表面張力スペクトロメータを開発し、空間を飛翔する液滴のμ秒レベルの動的挙動を観察しようとする課題である。液滴のハンドリング技術や液滴のモニタリング技術などの要素技術を確立し、両要素技術を組み合わせることで、従来法では観察できなかった10 μ秒の時間分解能での表面張力計測に世界で初めて成功した。さらに、液滴の安定化技術により測定時間範囲を10ミリ秒まで可能とし、液滴の衝突融合に伴う高速の分子反応現象のモニタリングといった新たな応用の可能性を示したことは特筆すべき成果である。
 今後は、物理化学の基礎研究、インクジェットプリンタ、界面活性剤等、広く液滴関連分野への実用化が望め、装置の小型化・低コスト化の点でも高く評価でき、より一層の開発加速を期待したい。
  本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。