資料4

開発課題名「原子分解能磁場フリー電子顕微鏡の開発」

(平成26年度採択:最先端研究基盤領域 機器開発タイプ)

チームリーダー :  柴田 直哉【東京大学 大学院工学系研究科 准教授】
サブリーダー :  河野 祐二【日本電子(株) EM事業ユニット 主務】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  日本電子(株)
T.開発の概要
 本課題では従来の常識を打ち破る無磁場下での原子分解能観察を可能にする電子顕微鏡を開発する。収差補正技術を前提とした新しいコンセプトの対物レンズおよび超高精度・高感度位置分解型検出器の開発により、磁性材料中の磁気・磁区構造を保ったまま原子レベルでの観察を可能にする原子分解能磁場フリー電子顕微鏡を実現する。これにより、先進磁性材料、磁気メモリ、スピントロニクスデバイス、スピン秩序構造などの超高分解能磁性構造解析に革新をもたらすことが期待できる。
U.中間評価における評価項目
(1)磁場フリー超高分解能対物レンズ開発
 磁場フリー超高分解能対物レンズについては基本設計を完了し、予想性能として、空間分解能0.3 nm以下、試料周辺領域における磁場0.2 mT以下などを確認した。
(2)超高精度角度・位置分解型STEM検出器開発
 STEM検出器については、目標とする検出精度(0.1 mrad以下)を有する8分割型検出器の設計を完了した。
(3)検出器制御ソフトウェア開発
 目標仕様を満足する、ハード制御系ソフトウェアと解析系ソフトウェアの開発を完了した。
V.評 価
 本課題は、これまで開発してきた高次収差補正技術や分割型検出器を用いた微分位相コントラスト(DPC)法などをベースに、観測試料周辺の磁場がゼロとなる短焦点磁界レンズ、特殊収束絞り、検出系、対物レンズ系ソフトウェアなどの開発を行い、原子分解能磁場フリー電子顕微鏡の実現を目指すものである。目標性能をもつ磁場フリー超高分解能対物レンズや特殊収束絞り、8分割方検出器などの設計を完了し、一部製作に取り掛かるなど開発は順調に進んでいる。また、既存装置を用いて無磁場観測実験を別途行い、試料の磁場構造をリアルタイムに観測できることを確認した。今後は、電磁場感度と空間分解能の両立に十分配慮しつつ、原子レベルでの磁気・磁区構造直接観察を可能にするという最終目標へ向けた技術開発を着実に推進すべきである[A]。