資料4

開発課題名「全原子を測定対象とする次世代型NMR装置の開発」

(平成26年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  山田 和彦【高知大学 教育研究部総合科学系複合領域科学部門 特任講師】
中核機関 :  高知大学
参画機関 :  京都大学、東京大学、理化学研究所、山形大学、早稲田大学
T.開発の概要
 既存の核磁気共鳴(NMR)装置では、四極子相互作用や核−電子スピン相互作用に起因する線幅や感度不足が問題となり、測定可能な核種が限定されている。そこで、本開発では、周期表上の全ての原子を測定対象とする次世代型NMR装置を開発する。磁場掃引型NMR装置に最先端の超高感度化技術であるオプトメカニクスと高温超伝導コイルを組み合わせた新規測定手法を導入し、世界標準の次世代型NMR装置として、我が国発の新しい分析機器のコンセプトを確立する。
U.中間評価における評価項目
(1)超高感度化を目指したオプトメカニクスNMR法の開発
 光学システムについては、高Q値のSiN薄膜キャパシタの開発と、微弱な機械振動の観測が可能な薄膜振動―光トランスデューサの開発に成功した。ラジオ波システムについては、目標のQ値を持つNMRプローブの開発と所望の帯域でNMR測定が可能なスペクトルメータの開発に成功した。
(2)高温超伝導を用いた超高感度化NMRコイルの開発
 高温超伝導コイルの設計・試作を行い、目標のQ値をほぼ達成した。また、高温超伝導体を用いた固体NMR用コイル実現へ向けた設計と試作評価を行い、送受信間アイソレーション、90度パルス長などの目標性能を確認した。
(3)磁場掃引型NMR装置を用いた新規測定手法の開発
 磁場掃引が可能な高磁場無冷媒型超伝導磁石について、最終目標達成に向けた最適仕様の検討を行い、仕様を最終的に確定し発注を行った。既存の磁場掃引型NMR装置を用いて、共有結合を有する有機硫黄化合物中の硫黄のNMRパラメータの計測に本方式として初めて成功した。
V.評 価
 本課題は、固定磁場・周波数可変で行う従来NMR装置では測定困難な固体試料に対してもNMR測定が可能な「全原子を測定対象とするNMR装置」の実現を目指し、固定周波数・磁場掃引で行うNMR計測手法と、高温超伝導コイルとオプトメカニクスを利用したNMR測定の高感度化技術を開発するものである。高温超伝導コイル、薄膜キャパシタ、薄膜振動―光トランスデューサなどオプトメカニクス計測のための要素技術開発は順調に進められており、磁場掃引型NMR手法の有効性についても確認を行っている。今後は、知的財産権の戦略的な取得に十分配慮しつつ、最終目標へ向けた技術開発を着実に推進すべきである[A]。