資料4

開発課題名「高感度かつ高精度な転写産物の検出技術の開発」

(平成26年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  保川 清【京都大学 大学院農学研究科 教授】
サブリーダー :  林 司【(株)カイノス 開発本部 取締役・開発本部長】
中核機関 :  京都大学
参画機関 :  (株)カイノス、関西学院大学、大阪府立母子保健総合医療センター
T.開発の概要
 現在のcDNA合成にはレトロウイルス由来の逆転写酵素が用いられているが、鋳型RNAがつくる二次構造および酵素自身の不安定性により、感度と正確性においてDNA合成酵素に及ばない。本課題では、独自開発の「耐熱型逆転写酵素」、「逆転写活性を有する耐熱型DNAポリメラーゼ」、「RNA・DNAヘリカーゼ」を用いて、1〜数分子の標的RNAから正確な配列をもつcDNAを確実に合成する技術を開発する。さらに、本技術をマイクロアレイに適用し、転写産物の高感度かつ高精度な検出を実現する。
U.中間評価における評価項目
(1)酵素の生産・保存体制の確立
 新規の耐熱型逆転写酵素、耐熱型DNAポリメラーゼ、DNA・RNAヘリカーゼの生産方法をほぼ確立した。また、それぞれ酵素ユニット測定法を構築し、ほぼ中間目標を達成した。
(2)新規3酵素によるcDNAの合成
 標的RNA100分子を含む10μLの試料に対して 新規3酵素を使ってcDNAを合成した後、DNAをPCRで検出し、中間目標を達成した。
(3)感度評価技術の構築
 新規3酵素存在下でcDNAを合成後、段階希釈した試料のNASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)-核酸クロマト法により検出限界希釈率を決定することが出来た。また、MMV(microarray with manageable volumes)マイクロアレイでcDNA合成、PCR、インビトロ転写、インビトロ翻訳を実現し、中間目標を達成した。
(4)正確性評価技術の構築
 βガラクトシダーゼ活性測定法、誤取込測定法、誤伸長測定法について検討し、それぞれの問題点を明確にした。今後、問題点の解決に向け検討を継続する。
V.評 価
 独自開発の耐熱型逆転写酵素、耐熱型DNAポリメラーゼ、RNA・DNAヘリカーゼを用いて、数分子の標的RNAから正確にcDNAを合成する技術の開発である。開発はほぼ順調に進捗しており、3酵素の生産、3酵素によるcDNA合成技術、感度評価などの要素技術はほぼ確立できた。ただし、正確性(忠実度)評価法については、方法論を含め検討を重ねることが必要である。
 今後は、課題となる正確性評価法の検討を進めるとともに、3酵素系だけでなく より簡易な2酵素系での合成技術も検討を重ね、実用化に向けて着実に開発を推進すべきである[A]。