資料4

開発課題名「マルチモーダル発光イメージングシステムの開発」

(平成25年度採択:最先端研究基盤領域(旧一般領域) 要素技術タイプ)

チームリーダー :  永井 健治【大阪大学 産業科学研究所 教授】
中核機関 :  大阪大学
T.開発の概要
 励起光の照射を必要としない化学発光観察は、光によって生理機能を制御するオプトジェネティクスとの併用が可能であるが、両技術を実時間の分解能で併用することは困難であった。本開発では、複数の生体分子を光で操作しながら高速かつ長期間、焦点ずれなく複数の生理機能を化学発光により可視化できる「マルチモーダル発光イメージングシステム」を構築し、これまでにない多次元機能動態操作観察解析に資する技術を確立する。
U.中間評価における評価項目
(1)超高光度化学発光タンパク質の開発
 発光タンパク質の高光度化では、従来のNano-lanternに対し目標値を超える7倍の明るさのタンパク質(eNano-lantern)を開発した。多色化については510 nmと580 nmの2種類の化学発光タンパク質が生成できた。高光度化したタンパク質(eNano-lantern)を基にカルシウムイオン濃度に対して190%発光強度が変化する指示薬の開発に成功した。全ての項目で目標値を達成した。
(2)化学発光・光操作顕微システムの開発
 光刺激光学系の構築については、単色光で構築し、光反応性タンパク質の活性化を確認した。化学発光自動焦点システムの構築では、カメラデッドタイムを利用した高速自動焦点システムにより、応答速度50 msecを達成した。化学発光3D超解像システムの開発では、光スイッチング型化学発光タンパク質を開発し、青色照射により発光をオフすることに成功した。
V.評 価
 発光顕微鏡は蛍光顕微鏡ほどの地位は獲得していないが、これまで、化学発光によるライブイメージングが実現されなかったのは、発光強度が弱いため長時間露光を必要とすることや、3次元像が得にくいこと、発光基質供給方法の問題があることなどがその主たる理由である。これらの問題点を克服するために、発光タンパク質のもつ様々な性質を、進化工学的な方法等で改変することなどにより、長時間観察可能でマルチモーダルな発光顕微鏡システムを構築するプロジェクトである。本チームの強みは遺伝子工学技術と光学技術の両者に抜群の技を有している点である。開発は順調に進捗し、中間評価時点の数値目標を全ての項目で達成した。最もチャレンジングなサブテーマは、発光基質供給問題を解決するもので、発光基質生合成の代謝系全体の遺伝子を同定し、観察対象細胞にこの遺伝子群を導入して、発光基質の長時間供給を実現するというものである。予算措置が可能であれば、中断しているこのサブテーマの再開を期待する。今後はチームとして知財戦略についても積極的に推進すべきである[S]。