資料4

開発課題名「細胞内蛋白質の無侵襲原子レベル立体構造解析技術の開発」

(平成25年度採択:最先端研究基盤領域(旧一般領域) 要素技術タイプ)

チームリーダー :  杤尾 豪人【京都大学 大学院理学研究科 教授】
中核機関 :  京都大学
参画機関 :  (独)理化学研究所
T.開発の概要
 核磁気共鳴法(NMR)は、タンパク質の立体構造を原子分解能で決定できる手法である。しかし、その計測対象は、あくまで、精製・純化した試験管内の試料に限られてきた。NMRは、本来、細胞や生体に対して無侵襲な計測法である。そこで、本開発では、NMRを使って生きた細胞内のタンパク質の立体構造や相互作用、ダイナミクスを無侵襲に計測する手法を開発する。これにより、細胞内でのタンパク質の働きや薬剤との相互作用などの解明が進み、医薬研究への貢献が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)ジユビキチンによるin cell PCSの原理検証
 試験管内でジユビキチンの配向解析はほぼ達成したが、DOTA-M8標識タンパク質の調製が遅れた為、DOTA-M8標識したジユビキチンの細胞内導入、in-cell PCS の測定・解析は、条件最適化が図れず、中間目標を達成出来なかった。しかし一方、タンパク質の細胞内大量導入法としてCPP法に優る電気穿孔法の有効性を示した。
(2)細胞内タンパク質の分子ゆらぎ解析
 15N標識体ではなく19F標識ユビキチン(1種)の調製を行った。19F標識体を用いて in-cell NMRを測定し、全ての19F-NMR信号を取得することが出来た。15N標識体では、数値目標を達成できていないが、15N標識体の調製ができれば、同様に in-cell NMR を実現出来る見通しである。
V.評 価
 細胞内タンパク質の立体構造解析を実現する為に in-cell NMR システムを開発するというチャレンジングな課題である。
 DOTAをタンパク質に剛体結合させることによって立体構造解析用NMRデータを感度よく得る方針であったが、DOTA-M8の大量調製とそのタンパク質への結合反応の収率改善が遅れたため、中間評価時点の数値目標を達成できていない。しかし一方、タンパク質の細胞内導入法として電気穿孔法という汎用手法の有効性を示せた。
 今後は、研究室移転等による開発の遅れを取り戻しDOTA-M8標識体の調製を急ぎ in-cell PCS法の質の向上を図り、細胞内タンパク質の立体構造解析技術の確立を目指し効率的・効果的に開発を推進すべきである。[B]