資料4

開発課題名「原子分解能の元素・状態分析用 X線STM開発」

(平成25年度採択:最先端研究基盤領域(旧一般領域) 要素技術タイプ)

チームリーダー :  齋藤 彰【大阪大学 大学院工学研究科 准教授】
中核機関 :  大阪大学
T.開発の概要
 X線による内殻励起を利用し、原子分解能で元素・化学状態を分析できるSTMを開発する。本チームリーダーがSPring-8で蓄積してきた「放射光STM」の技術・ノウハウを元に、新たな集光光源を組み合わせ、分析能力を飛躍的に拡張する。放射光施設を利用しなくても、実験室系でも原子分解能の化学分析ができる「X線STM」を標準化するとともに、分析のみならず、元素選択的な局所反応制御とその計測も可能にすることを目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)微小平行光源と制御系の確立
 汎用ブロードX線源と新規構築したX線集光システムを用いて微小X線光源の評価を行い、X線出射部の200 mm下流でビーム径拡大が10%以下、ビームの位置制御精度として0.1 μm以下であることを確認した。
(2)X線STM におけるSTM 部の確立
 X線源搭載下でSTM 像取得が可能であること、その空間分解能は1 nm以下であることを確認した。
(3)蛍光X線計測系(軸合わせ用)の評価
 蛍光X線計測を行った結果、試料中のFe標準スペクトルを取得できること、そのエネルギー分解能が140 eVであることを確認した。
V.評 価
 本課題は、原子レベル分解能をもつ元素・状態分析用X線STM実験において、従来用いられてきた放射光X線源に代わり、汎用X線発生装置を用いて大学等の実験室でもX線STM実験が行えるようにするシステム構築をめざしている。そのために、ビーム集光によるビーム幅微小化による信号増大や雑音低減など、S/Nの大幅改善のための要素技術開発を行っている。新たに構築したX線ビーム集光システムやSTM部の性能評価を行い、中間目標については全ての目標項目を達成した。しかし、この中間評価時点において、「原子分解能」という最終目標に至る道筋や見通しが未だ十分明確にはなっていない。全体計画をいま一度練り直すとともに、これからはより効率的・効果的に開発を推進すべきである[B]。