資料4

開発課題名「位相型高感度X線医用診断機器の実用化開発」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) 実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成23年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  長束 澄也【コニカミノルタ(株) ヘルスケアカンパニー 開発統括部 画像応用開発チームリーダー 】
サブリーダー :  田中 淳司【埼玉医科大学 放射線科 教授】
中核機関 :  コニカミノルタ(株) ヘルスケアカンパニー
参画機関 :  埼玉医科大学、東北大学
T.開発の概要
 X線の位相に注目することにより、軟組織に対する低感度というX線画像の欠点を克服し、X線Talbot-Lau干渉計による位相コントラスト撮影技術を活用して、臨床現場にて種々の部位の撮影が可能な撮影装置を構築し、疾患の病変検出を実証する。
U.開発項目
(1)プロトタイプ機の開発
 撮影対象、操作性:四肢関節が撮影可能 視野:8 cm角以上 撮影時間:60秒以下の目標に対し、膝関節の軟骨、半月板の鮮明な描出を達成した。また、高いユーザービリティーで軟骨撮影を可能としている。格子の基材となるシリコンウエハのサイズを6インチから8インチに拡大し、従来の格子が6 cm角であったのに対し、10 cm角への大面積化を実施した。画像検出器を変更し電装系とソフトウェアを新規開発した結果、撮影時間を大幅に短縮することに成功した。
(2)臨床価値の確認
  関節リウマチ患者を対象とした臨床研究によって、早期段階の軟骨病変を検出して診断画像として識別可能なことを実証している。また、症例蓄積した結果、リウマチ進行に伴って軟骨が薄膜化し、これを定量化可能なことを統計的にも検証することを可能とした。  乳がんについても、手術で切除された乳房組織の撮影評価により、微小石灰化と乳がん組織が小角散乱画像において顕著に病変描出することが確認され、乳がん診断への適用の可能性を見出した。
(3)X線Talbot-Lau干渉計技術に関する高度化技術開発
 フーリエ変換法の検討動機は撮影時間の短縮であり、医用画像診断装置を前提とする構成においては、空間分解能と感度が縞走査法によるものに遠く及ばないという結論を得ている。また、フーリエ変換法自体の改良も検討されているが、この問題を埋め合わせる程の効果はなかった。撮影時間短縮のため、装置全体をコンパクト化することとし、全長50cm以下のX線Talbot-Lau干渉計設計を考案し、動作に成功している。
(4)画像コントラストの理論的理解
 散乱画像は被写体中に分布する散乱体による極小角X線散乱が原因と考えられ、その散乱体の大きさと信号の強さについて理論・実験の両面で検討している。その結果、散乱体の直径が格子の周期と同等であるときに最も信号が強くなることを突き止め、医療応用する場合の読影技術開発において重要な知見となっている。
V.評 価
 本課題では、プロトタイプ機撮影装置の開発、それを用いた軟骨の臨床評価、装置の高度化(撮影時間の短縮、三次元撮影、コンパクト化)のための技術開発、海外における臨床撮影、乳がん検診の可能性の検討の五つのサブテーマについて目標通りの成果が得られた。
 今後、国内外での臨床評価を更に加速することにより、近い将来本開発成果がX線撮影の新分野の開拓に結びつくことが大いに期待される。当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。