資料4

開発課題名「集水域に着目した放射線の自然浄化モニタリングシステムの開発」

(平成24年度採択:「放射線計測領域」革新技術タイプ(要素技術型))

チームリーダー :  兼松 泰男【大阪大学 産学連携本部 教授】
サブリーダー :  藤宮 仁【(株)ダイナコム 代表取締役】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  (株)ダイナコム、 福島大学
T.開発の概要
 福島県において、放射性物質の減衰や移動(自然崩壊、森林の枝葉の脱落、腐敗と雨による河川への流出、移動)を調査しておくことは今後の放射線量の変化を把握するために重要である。本課題では、集水域の川底放射線量を計測するため、橋梁から垂下して利用するタイプのセシウムカウンターを開発し、阿武隈川流域の橋梁30箇所に設置する。これにより、自然浄化作用のモニタリングを行い、長期的な放射線量の推移を明らかにできるモニタリングシステムを構築することを目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)自然浄化モニタリングシステムの開発
 累積水量によって、集水域のスケールを変更することができる集水域マップを作成し、国土数値情報の集水域より細かい区分が可能となった。重点観測対象として、福島県伊達市霊山町小国地区を対象として、自然浄化モニタリングシステムを構築するためのモデルの検証を行った。また、温泉地域に機器を設置して定点計測を行い、設置による定点観測が困難な場所については、定期的に移動しながら空間線量および土壌のサンプリング計測を行う「移動定点計測」の導入を決定した。
(2)モニタリングシステムソフトウェアの開発
 地図情報システムArcGISに国土数値情報ダウンロードサービスから取得した地図情報をインポートし、累積流量などの閾値による集水域の可変を可能とするプラットフォームを構築し、福島県設置モニタリングポストより、1年間連続データが取得可能な511箇所を更に絞り込んだ。また、降雪による一時的な低下を除去し、除染によって階段状に低下した後の空間放射線量の減衰定数を推定するソフトウェアを開発した。その結果、90 %以上の領域が1〜4年程度で半減する程度の速度で空間放射線量が減衰していることが分かった。粒子フィルタを用いた集水域ごとのモデル構築を行った結果、各集水域の減衰定数などは推定できたが、降雨、土地利用、地質、傾斜角度だけでは、説明できない領域が40 %程度あることが判明した。
(3)フィールド検証
 実証実験の候補地として,福島県伊達市霊山町上小国地区を選定し,集水域の連結モデルおよび詳細ミクロモデルを検証するための物理モデルを構築した。今後は,実地計測を行うことによりモデルの妥当性を検証する。
V.評 価
 本開発は、定点のモニタリング観測データから各地域における放射性物質の除去あるいは集積状況をいち早く推測できるシステムの開発である。そのため、河川を中心とする集水域を設定し、その地形および気象状況のデータ並びにモニタリングポイントでの放射線量、航空機による線量率データおよび可搬型測定器による線量率のデータを取り込んで、評価するシステムを構築するものである。当初の目標に向けて開発には進捗がみられるが、開発したシステムからどのような具体的な出力(情報)が得られるか、また得られた情報がどのように活用されるのかを明確にする必要がある。また、自然浄化モニタリングシステムを小国地区から福島全域へ公的データを活用しながら広げることが望まれる。機器設置定点観測から移動定点観測への変更に伴う観測計画の再構築を速やかに行い、効率的・効果的に開発を推進すべきである。[B]


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