資料4

開発課題名「LANFOS:食品の非破壊放射能検査を可能とする低コスト検出器の開発」

(平成24年度採択:「放射線計測領域」革新技術タイプ(機器開発型))

チームリーダー :  マルコ カソリーノ【(独)理化学研究所 EUSO チーム チームリーダー】
サブリーダー :  後藤 昌幸【(株) ジーテック 代表取締役社長】
中核機関 :  (独)理化学研究所
参画機関 :  (独)理化学研究所
T.開発の概要
 本課題では、宇宙物理研究のための次世代技術を応用し、全立体角に放出される食品のガンマ線を測定することが可能な検出器を開発する。食品の非破壊かつ高感度(検出下限10 Bq/kg)な測定を実現するとともに、装置の小型化、低コスト化を図ることで、工場、市場等様々な場所での利用が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)LANFOS(Large Area Non-destructive Food Sampler)−H実験室モデルの試作と評価
1−1.プラスチックシンチレータの試作と評価
 直方体(50 x 50 x 100 mm3)のプラスチックシンチレータに波長変換光ファイバーを接続したプラスチックシンチレータユニットを製作した。セシウム137とカリウム40の線源として塩化カリウムを用いて波高スペクトルの測定を行い、取得された波高スペクトルからガンマ線のエネルギーの違いによりスペクトルの形が変わることを確認した。
1−2. CsIシンチレータの試作と評価
 LANFOS-Hに装備するプロトタイプ検出器として、直方体(50x50x50mm3)のCsI(Tl)シンチレータのブロックに直接Si-PMを取り付けて、CsI(Tl)シンチレータユニットを製作した。セシウム137とカリウム40の線源として塩化カリウムを用いて波高スペクトルの測定を行い、セシウム137と塩化カリウムの波高スペクトルのピークを分離し、放射能定量分析ができることを確認した
(2)LANFOS-H製品モデル設計
 LANFOS-H製品版の設計図作成終了。
(3)LANFOS-H製品モデル性能予測
 Geant4(シミュレータプログラム)を使ったモンテカルロシミュレーションによって、円筒型プラスチックシンチレータの検出効率及びCsI(Tl)の厚さとガンマ線相互作用の関係を調べた。また、円筒形プラスチックシンチレータのバックグラウンドを12時間測定した結果、その計数誤差(1σ)はセシウム2Bq程度に相当することを確認した。さらに(10 x 10 x 100 mm3)の直方体CsI(Tl)シンチレータを配することにより性能向上が見込めることを確認した。
V.評 価
 核種測定のためにCsI検出器を上下に、また放射能測定にはプラスチックシンチレータを側面に配して不定形の食品を測定するシステムである。製作したCsI検出器およびプラスチックシンチレータでの性能の検証を終了し、実試料への展開が図られ、12時間測定により2 Bq(1σ)までの放射性セシウムを測定できることが示された。しかし、実用での使用にはさらに信頼性の検討が望まれ、開発機器の名前にもあるような大面積での放射能測定、すなわち大型試料から小型試料まで不定形の試料の測定ができる特徴的な装置の実現が期待される。一方、家庭でも利用可能な低コストでの実現が本機の課題にもなっているが、開発機種の順序を絞るなど、早期に実現できる機種開発を優先的に進めるべきである。装置の信頼性について、放射能既知の実試料・標準物質を用いて早急に性能を評価し、スクリーニング検査法に適用できることを実証しなくてはならない。また、LANFOS放射線検査装置としての特許出願を積極的に検討すべきである。現地での実試料の測定を行うなど、先ずはLANFOS-Hの製品化に向けて効率的・効果的に開発を推進すべきである。[B]


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