資料4

開発課題名「燃料電池内の水生成・移動現象のNMR計測技術の開発」

(平成24年度採択:グリーンイノベーション領域・要素技術タイプ)

チームリーダー :  小川 邦康【慶應義塾大学 理工学部 准教授】
サブリーダー :  拝師 智之【(株)エム・アール・テクノロジー 代表取締役】
中核機関 :  慶應義塾大学
参画機関 :  (株)エム・アール・テクノロジー
T.開発の概要
 燃料電池の触媒表面から生成する水がガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)を抜け、ガス流路を通って排出されるまでの水の動的挙動を計測する技術を開発する。実寸法に近い燃料電池内に小型NMR コイルを挿入し、発電電流分布の計測から生成水の空間分布を求め、発電時の高分子膜内の含水量、GDL表面およびガス流路内を通り抜ける水を計測し、3次元的な水移動を把握する。水移動の可視化がGDLおよび流路設計に役立ち、高密度発電の維持と開発費の削減が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)超電導磁石の作製・納品完了とPEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)への適用評価
 空間内径約30cmの超電導磁石(1.1T)に勾配磁場コイルを加えてNMR信号の安定化を図り、かつ実用的な大きさの燃料電池を均一磁場に装填できる装置を作製して、無発電時であるが燃料電池から水のNMR信号を取得できることを確認した。
(2)1チャンネルDC回路の作製と動作評価
 1チャンネル当たり16個の小型NMRコイルを接続でき、デジタル検波方式で低ノイズ化した各NMR信号を短時間に連続的に切替取得できる測定共振回路を作製し、計測を行った。燃料電池内の含水量の信号強度変動が±10%以内に収まり、目標を達成した。
V.評 価
 従来、大型施設を必要とする中性子線散乱を用いた測定方法しかなかった燃料電池内の液化水の発生挙動を、電池内に小型NMRコイルを多数挿入して直接測定できる小型計測装置を開発する斬新な試みである。開発は順調に進み、実用の大きさの燃料電池を均一磁場内に収容できる大型磁石の開発、および、小型NMRコイルからノイズを低減でき、かつ、多素子からの計測が可能な共振回路の製作は目標通り達成した。しかし、今後の課題である小型コイルの均一化やSN比向上はもちろん、128個のコイル装着による予期せぬ影響等、予測の難しい課題が待ち受けている可能性がある。今後は開発装置の目的・用途をより明確にするとともに、測定を3次元化した際のユーザーメリットを熟慮したうえで開発を着実に推進すべきである。 [A]


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