資料4

開発課題名「蓄電池固体内反応局所領域の非破壊分析装置と手法の開発」

(平成24年度採択:グリーンイノベーション領域・機器開発タイプ)

チームリーダー :  櫻井 吉晴【(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 副主席研究員】
サブリーダー :  長峰 勝【(株)長峰製作所 相談役】
中核機関 :  (公財)高輝度光科学研究センター
参画機関 :  (株)長峰製作所、群馬大学、京都大学、トヨタ自動車(株)
T.開発の概要
 高い物質透過能を有する100keV以上の放射光・高エネルギーX線のマイクロビームを用いて、蓄電池固体内局所領域の物質挙動を非破壊に観察し、蓄電池内部の反応分布を経時的に可視化する統合計測システムを開発する。また、本装置の利用が期待される大型Liイオン2次電池の研究開発現場での実証試験を行う。
U.中間評価における評価項目
(1)コンプトン分析装置の製作
 プロトタイプ機の基本設計は、X線検出器の前に設置するピンホール部を除いて完了した。また、機器配置、各機器の駆動軸を決定し、データ解析及び描画プログラムと同じMATLABにより機器制御に用いるプログラムの開発を実施する。スケジュール通り平成25年度中に全体の組立を完了する予定である。
(2)Ni製コンパクト型複合屈折レンズの開発
 本装置の重要な要素技術の一つである高エネルギーX線の屈折レンズの仕様を決め、曲率半径20μmの放物線形状の試作に成功し、115 keV用として54枚のレンズを重ね合わせた。焦点距離2900mmの焦点面において半値幅9μmの集光サイズが得られ、目標を達成した。
(3)高アスペクト比ピンホールの開発
 本装置のもう一つの重要な要素技術であるピンホールの開発はやや遅れていたが、タングステンを用いたピンホール成型体を作製し、焼成による収縮を含めて、内径30μm、長さ3mmの高アスペクト比を持つピンホールの試作に成功した。
V.評 価
 充放電時のリチウムイオン電池内部の物質挙動を非破壊で計測する画期的な装置を開発している。装置の要である高エネルギーX線の複合屈折レンズ、および、コンプトン散乱光を捕らえる高アスペクト比ピンホールの試作は概ね順調に進み、プロトタイプ機の完成は間近な段階にあることを評価したい。しかし、データ処理・解析において、リチウム量の感度・定量性を検討すべきであり、得られるデータ、特に解析から得られる数値については、ユーザーが容易に理解できるようにすべきである。また、電極中のリチウム量は充放電中や休止中で時間とともに変化するので、計測位置の違いによる計測時間のズレの影響など試料の経時変化を考慮した測定法を確立し、開発を着実に推進すべきである 。[A]


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