資料4

開発課題名「マルチカラーライブセル超解像イメージングを可能とする蛍光プローブの開発」

(平成24年度採択:一般領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  廣瀬 謙造【東京大学 大学院医学系研究科 教授】
サブリーダー :  丸山 健一【五稜化学(株) 代表取締役】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  五稜化学(株)、(株)ニコン
T.開発の概要
 生細胞内での複数の生体分子の動態をナノメートルオーダーの空間解像度でリアルタイムに可視化、解析するために新発想に基づく蛍光プローブ開発を行う。本開発によりマルチカラーライブセル超解像イメージングが可能となり、生きた細胞内で分子のナノレベルの配置に着目した細胞機能解析の実現が期待できる。この結果、がんや生活習慣病、精神疾患など多くの疾患に対する従来にない視点からの創薬、治療戦略の開発が見込まれる。
U.中間評価における評価項目
(1)蛍光明滅プローブのプロトタイプの完成
 細胞毒性のない溶液中で蛍光アクチベーター(たんぱく質や核酸)と既存あるいは新規色素との反応に伴う蛍光強度増強についてテストを行った。色素Aについては、1万倍以上の蛍光強度増強が見られるたんぱく質1を得た。色素Bに対しては、390倍〜1万倍以上の蛍光強度上昇を示すたんぱく質2と、2,300倍の蛍光強度増強を示す核酸1を得た。また、色素Cに対しては、 500倍の蛍光変化を示す核酸2を得た。以上の結果より、マイルストーンで設定した目標である40倍の蛍光強度増強指標を大きく上回る蛍光アクチベーターのプロトタイプを4種類得ることに成功した。
(2)蛍光明滅制御に用いる色素のプロトタイプの完成
 新規に開発した2種類の色素B誘導体がたんぱく質2と混合することで7,000倍以上の蛍光強度上昇を達成した。この結果より、マイルストーンで設定した目標である40倍の蛍光強度増強指標を大きく上回る蛍光色素のプロトタイプを2種類得ることに成功した。
V.評 価
 現在急速に進展している「超高解像イメージング顕微鏡」は、蛍光プローブからのフォトンを集積することで高空間分解能の画像を構築しているが、本開発は、実質的には非蛍光性である分子を巨大分子(蛍光アクチベーター)により、蛍光収率を飛躍的に上昇させる原理に基づき、生きた細胞のイメージングシステムの開発を図るものである。非蛍光性分子のモデルに用いた色素群に対して、たんぱく質や核酸が蛍光アクチベーターとして機能する結果に基づき、蛍光明滅プローブとして25化合物の合成に成功し、実際に細胞イメージングに適用できることを実証するなど、中間評価実施時までの目標を達成している。今後も開発を着実に推進すべきである 。[A]


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