チームリーダー : |
末永 智一【東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 教授】 |
サブリーダー : |
青柳 重夫【北斗電工(株) 技術開発部 担当部長】 |
中核機関 : |
東北大学 |
参画機関 : |
北斗電工(株)、首都大学東京、(株)ナノコントロール |
- T.開発の概要
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試料近傍の化学物質の濃度を微小電極により局所的に検出する走査型電気化学顕微鏡(SECM)は、細胞の呼吸量評価から電池材料まで、幅広い応用が期待されるが、1 μmを上回る解像度の測定は困難であった。本課題では、光学顕微鏡の限界を上回る解像度かつ高速で、化学物質の局所的な濃度分布を測定可能な「超高解像度電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡」の開発を目指す。本装置により、細胞膜タンパク質の分布状態や神経伝達物質の放出部位の可視化などが期待される。
- U.中間評価における評価項目
- (1)微小電流検出器開発
- 電流検出アナログ基板及びAD/DA基板の基本設計図を完成させ、50 fA以下のバイアス電流のオペアンプを組み込んだアナログ基板を設計し、500 fA以下の微小電流を検出。200 μsの時間分解能達成した。
- (2)超高精度位置決めを可能とするコントローラ及びファームウェア開発
- ピエゾステージを制御するコントローラの基本設計図を完成し、試作機を製作。基本性能は、Z軸(探針用)ステージの分解能は0.7 nm、共振周波数は4.08 Hzで目標を上回っており、XYステージも分解能は0.5 nm、共振周波数は5.95 Hzで目標を上回った。また、当初の達成目標になかったストローク100 μm、共振周波数1.36kHz、分解能1.2 nmの高速XYステージを設計・製作できている。
- (3)θ型ナノ複合機能微小電極開発
- 先端部の開口径が50 nmのθ型ナノ複合機能微小電極を 90 %以上の歩留まりで作製した。クオーツ管先端部で、ブタンガスを焼成し、焼成カーボン層の膜厚を50 nm 以上にすることに成功している。
- (4)制御・解析のソフトウェア技術開発
- FIFOによる通信システムを利用したプログラムを開発することによりデータ収録速度10 kHz達成し、高速位置制御コントロールアルゴリズムの開発により測定時間10分/1イメージを実現した。
- V.評 価
- 高解像度実現の鍵を握る微小電流検出器、高精度位置決めコントローラ、微小電極の開発に成功しており、目標とする解像度50 nm、撮像時間20分以内の電気化学イメージング、形状イメージングが実現する可能性が高い。開発成果の実用化に向けて本顕微鏡でしか見えない例を早急に示すと共に、開発を着実に推進すべきである。 [A]
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