資料4

開発課題名「質量分析用超臨界流体抽出分離装置の開発」

(平成24年度採択:一般領域 機器開発タイプ)

チームリーダー :  馬場 健史【大阪大学 大学院工学研究科 准教授】
サブリーダー :  冨田 眞巳【(株)島津製作所 分析計測事業部LCビジネスユニット部長】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  (株)島津製作所、神戸大学、宮崎県総合農業試験場
T.開発の概要
 臨床診断や食品の安全性検査などにおいて世界をリードするには、多検体のハイスループットスクリーニングを可能にする革新的な分析装置が必要である。本課題では、超臨界流体の特性を生かした自動多検体処理型抽出分離オンラインユニットを構築し、ハイスループット・高感度・高分離能な世界初の質量分析用超臨界流体抽出分離装置の開発を目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)装置開発
 低ノイズ背圧弁に関しては低脈動、低デッドボリュームの試作機を開発し、また、耐久性に関しては連続運転54日間を達成し、目標数値以上を達成した。
(2)超臨界流体抽出 (SFE)装置開発
 SFE基本性能に関しては抽出容器温度精密さ、システム耐圧ともに目標を上回った。
(3)乾燥血液スポット(DBS)中代謝物の解析
 DBSから151種類の脂質分子種とともに、38種類の親水性代謝物類を検出し、分析可能代謝物リストを構築した。また、DBS代謝物SFE分析条件に関しては、モディファイアーとしてメタノールを添加することにより、従来SFEのターゲットとされてきた疎水性化合物だけでなく、アミノ酸や核酸代謝物などの親水性化合物についても、良好に抽出できることを明らかにし、さらに、温度、圧力、抽出時間の最適化を達成した。
(4)疾患マーカー代謝物選定
 がん疾患患者の血清中代謝物についてLC/MSを用いて分析し、疾患バイオマーカー候補を選定した。続いて、DBSをSFEに供することで検出できる代謝物リストと比較し、SFE-SFC-MS装置で分析可能な疾患バイオマーカー候補を確定した。
(5)残留農薬抽出技術の構築
 低温低酸素粉砕法に関しては0 ℃、30秒以内の低温低酸素粉砕を実現し、少量サンプル均一粉砕法に関しては、1 g分取時の農薬濃度繰り返し精度10 %以内の目標を達成した。また、脱水剤に関しては、水分を100 %保持し装置流路に流出させない脱水剤を開発し、超臨界抽出条件に関しては494種の農薬の抽出条件を構築した。また、SFC-MS分析条件に関しては、440種の農薬の分離分析条件を見出した。
V.評 価
 本課題は超臨界流体抽出分離装置を開発するものでSFC-MS、SFEともに目標性能を上回る性能を達成している。目標とするDBS代謝物、疾患マーカー、農薬などの相互分離実証は、ほぼ順調に進んでいる。またモディファイアーとしてメタノールを添加して、疎水性化合物とともに、親水性化合物の分離も可能とするなどの成果を得たことも評価できる。
 また、感度と再現性において優れており、さらに流量安定性、析出防止などの優位性もあることから、競争力のある成果が得られることが期待される。今後、本装置の優位性を社会に示す為には、製品化を早急に進めると共に、標準化についても鋭意推進すべきである。 [S]


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