資料4

開発課題名「軽量・小型電子式個人線量計の大量校正システムの実用化開発 」

放射線計測領域 実用化タイプ(短期開発型)

開発実施期間 平成24年4月〜平成25年3月

チームリーダー :  大口 裕之【(株)千代田テクノル 線量計測事業本部線量計測技術課 課長】
中核機関 :  (株)千代田テクノル
参画機関 :  (独) 産業技術総合研究所
T.開発の概要
 現在、多くの住民が使用している放射線被ばく量の測定に用いる電子線量計などの使われ方に関して、測定値が機種ごとに異なっている、適正に校正されずに使用されている、積算線量計でなく個人被ばくの管理ができない、などの課題が見られる。これらの課題を解決するため、本開発では、各種線量計を大量かつ正確に校正できるシステムおよび被ばく量を容易に把握できるシステムを開発する。本成果の実用化により、住民が正しく校正された線量計を用い、自ら時間ごとの線量や一定期間の積算量の把握をすることが可能になる。
U.開発項目
(1)軽量・小型電子式個人線量計改良
 線量計を電気的に非接触でパソコンへのデータ送受信を可能とするために光通信と無線通信を行うシステムを開発した。線量計を受信用ケースに挿入すると、磁石で線量計の光通信システムが起動し、光通信を行う。さらに無線通信は、光信号で起動させてデータ送受信を行うシステムである。光通信、無線通信双方でデータ通信できることを確認した。また、線量計の読出し、書込みとも問題なく対応できることを確認した。
(2)2πγ線照射施設での無線及び照射冶具設置
 2πγ線施設からコリメートγ線場に変更して、大量校正システムを構築した。大量校正するために照射距離を離して、照射野に入る線量計の個数を増やし、1度に108個まで照射できるシステムを構築した。照射冶具周辺にアンテナを数本立て、無線で照射後の校正定数を線量計へ転送するようにした(データ読出し、書込みを可能にした。)。さらに、市販のアロカ製、富士電機製の電子線量計を照射できる治具を製作し、2πγ線照射施設にて、120本同時に照射可能にできることを確認した。
(3)軽量・小型電子式個人線量の管理
 線量計本体には、線量計のID、総積算量、総日数、1週間の日々線量、月毎の線量、日々の線量、1日の時間当たりの線量データが保存されている。パソコンを通じて、これらの情報を読出し、パソコンで確認できる。また、読出しと同時にCSVで1日の時間当たりの線量を除くデータをパソコンに保存していることを確認した。また、日々毎にこれらの数値とCSVデータが同じであることを確認した。再現性試験に関しては、校正の際に1度Csγ線で校正を行い、線量計に校正定数を書き込んだ後、再度、Csγ線を照射して10%範囲内で校正されていることを確認した。
(4)現地での検証
 つくば市と産業技術総合研究所との共同で今回の線量計とガラスバッジを同時に装着して、両者間での違いを検証した。つくば市での線量率が低いこともあり、1ヶ月着用では、ガラスバッジの検出限界未満であることが分かった。そこで、ガラスバッジの発光量から0.01mSv単位で評価を行った。この評価は、バックグラウンドを含んだグロス値として評価を行い、両者間での違いを比較した結果、両者間に有意な差が無いことを確認した。
V.評 価
 軽量・小型の電子式個人線量計を、無線データ送受信が可能となるように改良するとともに、各種線量計を大量かつ正確に校正するシステムと被爆量を簡便に把握できるシステムを開発することを目的としている。軽量・小型の電子式個人線量計の改良、2πγ線照射施設での無線と照射冶具の設置、個人線量の特性評価と実証試験に関して、目標を達成している。他社の製品である、日立アロカ製及び富士電機製の線量計を大量に照射できるシステムをも構築した。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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