資料4

開発課題名「土壌放射能濃度の深さ分布モニタの実用化開発」

放射線計測領域 実用化タイプ(短期開発型)

開発実施期間 平成24年4月〜平成25年3月

チームリーダー :  石倉 剛【富士電機(株) 東京事業所 機器生産センター 放射線装置部 モニター設計課 主査】
中核機関 :  富士電機(株)
参画機関 :  (独)放射線医学総合研究所、京都大学
T.開発の概要
 土壌中の放射性セシウム(セシウム134とセシウム137)について、深さ1〜2cmごとに検出下限100Bq/kg以下で測定できるモニターを開発する。開発機器は車両への搭載が可能なように100kg以下にし、現場で試料採取し、迅速な測定を可能なものとする。本成果の実用化により、農地などの土壌放射能の現場測定や、除染時の土壌剥ぎ取り厚の決定などへの利用が可能となる。
U.開発項目
(1)深さ分布測定技術の確立
 MCNP効率計算について、NaI検出器及びCsI検出器の検出効率を計算し寸法及び個数、配置の最適化を実施し、検出性能(位置分解能及び精度(統計誤差))の妥当性を評価した。演算補正においては、MCNPによる検出効率を用いてアンフォールディングコードSANDUによる放射能濃度深さ分布の補正方式を検討し、検出性能(位置分解能))の妥当性を評価した。工場及び福島県で検出限界が37〜99Bq/kgであり、目標値以内である事を確認した。検出限界及び位置分解能、精度は測定時間5分で評価しており、目標値以内であることを確認した。位置分解能について、製作した標準線源及び福島県で採取した土壌サンプルにより、8,000Bq/kgとなる位置の精度がGe検出器の測定と本モニターの測定が1cm以内で一致することを確認した。標準線源及び福島県で採取した土壌サンプルで、NaI検出器の統計誤差は0.8%以内、CsI検出器は8%以内となることを確認した。統計誤差はBG計数率誤差とFG計数率誤差の二乗和で正味計数率の統計誤差(1,σ)で評価した。
(2)モニター開発完了・製品化
 外形はΦ272xH420mmで、直径は目標超過し、高さは目標以内となり、体積としては目標の26,984ccに対して24,393ccと目標以内となり、フィールド試験で可搬性を有することを確認した (検出器を含むサンプル測定用鉛遮蔽体、測定・制御部除く寸法)。重量97kgで目標以内となった。
(3)現地での検証
 フィールドにおける放射線特性について、検出限界は99Bq/kg以下(BG3μSv/h・測定時間5分)であり、目標以内であることを確認した。精度(統計誤差)はNaI検出器で0.8%以内、CsI検出器で8%以内となり、目標以内であることを確認した。
 フィールドにおける演算補正方式の検証について、位置精度として、8000Bq/kgとなる位置の精度がGe検出器の測定と本モニターの測定が1cm以内で一致することを確認した。
V.評 価
 土壌中の放射性セシウム濃度の深さ方向の分布を、試料を採取した現場で迅速に測定するという当初の開発目標に対して、機器開発とシミュレーション計算を実施、田、畑、住宅の3箇所の土壌でフィールドテストを行ってGe検出器による厳密な測定との比較を行い、深さ方向の変化の計測に成功しており、様々な環境における除染現場で利用可能な成果が得られている。ただし、密度等の土壌の性質と測定値の過大・過小傾向の関係の解析なども含め、さらにフィールドテストを重ねて測定精度を改善する余地があると考えられる。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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