資料4

開発課題名「高速・高分離マルチカラムGCシステムの実用化開発」

一般領域 実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  上田 雅人【(株)島津製作所 分析計測事業部 GC・TAビジネスユニット ビジネスユニット長】
サブリーダー :  中釜 達朗【日本大学 生産工学部 准教授】
中核機関 :  (株)島津製作所
参画機関 :  日本大学 首都大学東京
T.開発の概要
 複雑な組成を持つ石油精製製品の品質を維持管理し、貴重な石化燃料を最大限に有効活用するためのGC システムを開発する。先の先端計測機器開発事業で開発したプロトタイプを更に高度化し、チップカラムを異なる分離モードで並列或いは直列接続することで高速・高精度分析を実現する。従前数時間を要していた組成分析を数分の1の時間で実現し、石油精製、流通、貯蔵の各現場に配置可能な、迅速・高精度・省エネルギー型GC の実用化を目指す。
U.開発項目
(1)カラムユニットの開発
 無極性(OV-1相当)、中極性(OV-1701相当)、高極性(Wax)の3種類のプレートカラムを開発。無極性カラムにおいては約80,000段の理論段数を達成した。温調性能としては、135℃/minの最高昇温速度を達成しており、50℃から450℃の昇温、および 450℃から50℃の降温が約3minで行える性能を有することを確認した。
(2)検出器ユニットの開発
 FID(水素炎イオン検出器)に関しては、中核機関が市販しているFIDをベースに、ヒータブロックの改良を施すことで検出器下部でのコールドスポットの解消を行い、高沸点成分(C44で確認)のサンプル吸着が生じないことを確認した。AED(原子発光検出器)での検出感度に関しては、含硫黄成化合物については4pgS/sec、含酸素化合物については42pgO/secを達成した。
(3)マルチカラムGCシステムの開発
 2つの独立温調可能なカラムカートリッジ、2つの検出器(FID、AED、ECD)、スイッチング素子が搭載可能なマルチカラムGC(ガスクロマトグラフ)システムを開発した。同一昇温条件での消費電力量測定結果から、従来マルチディメンジョナルGCの542Whに対して、マルチカラムGCでは241Whと55%以上の削減となることを確認している。更に開発システムを用いることで分析時間の短縮が可能であるため、分析時間短縮も加味すると、同様の分析を行う場合、従来システムに比べ77%の消費電力削減が見込まれ、システム本体も幅355mm、高さ445mm、奥行き415mm、重量は約33kgとなっている。
V.評 価
 MEMS技術を駆使して作製したSUS製プレートカラムをコア技術として、小型の多次元分離用GCシステムの開発し、分離能と時間効率、省電力などに優れるという実用性能の実証に成功した。マイクロ・可搬型GCの用途・市場規模の拡大が期待されることから、本システムの汎用性は注目に値する。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業に相応しい成果をあげたと評価する[A]。


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