資料4

開発課題名「FIB光イオン化ナノ質量イメージング装置の実用化開発」

一般領域 実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  遠藤 克己【(株)トヤマ 代表取締役社長】
サブリーダー :  坂本 哲夫【工学院大学 電気システム工学科 准教授】
中核機関 :  (株)トヤマ
参画機関 :  東京工業大学、新日鐵住金(株)、(株)島津製作所
T.開発の概要
 本事業「機器開発タイプ」により開発した、ナノスケールでの観察・加工が可能で有機物、無機物共に質量分析イメージングできる装置を、大気汚染微粒子やナノスケール構造を有する有機ポリマー材料、有機薄膜太陽電池、鉄鋼粒界分析などに適用し、ユーザーと緊密に連携して実用性を実証する。既存のプロトタイプ機を改良しつつ実用化に必要な専用高輝度レーザー光源の安定化とスペクトルデータベース、自動測定機能などユーザーインターフェースを拡充し、市販可能な装置を完成させる。
U.開発項目
(1)光イオン化ナノ質量イメージング装置の開発
  D-RAM内のアルミニューム配線で40 nm以下(38 nm)の分解能を通常の計測条件で達成。また、SEM像では20 nm以下を達成している。YAGレーザーの4倍波発生器を2台結合(β機、デュアル型)することにより、波長266 nm、出力100μJ以上、繰返し1kHzを達成した。また、無機物に止まらず、有機物(ピレン)に対しても質量イメージングができることを確認した。ピレンの視野角50μmで質量イメージングマッピング時間は15分以下(680秒)となっている。
(2)ソフトウェアの開発
 濾紙上の環境微粒子に対し、20個以上の微粒子で連続自動計測を実施し、スペクトル解析ソフトとして、主成分分析機能の搭載、任意領域のスペクトル出力機能、成分候補表示(整数質量に対する化合物候補の表示)、スペクトル間演算処理機能を実装している。
 画像解析機能として、任意成分(ユーザー選択も可能)の分布イメージ出力機能、成分分布のイメージカラー合成、任意線分上の濃度プロファイル出力、画像間演算処理機能を実装している。スペクトルデーター用として、SNMS,SIMS合わせて、合計62種の金属、金属錯体、PAH(多環芳香族化合物)、高分子の計測を行い、データーベース化した。
(3)インターロックの装備
 レーザー光導光部を簡単に覆うことができる遮光用治具を製作し、設置している。露出する高電圧部は電源自体のメンテナンス時を除き、絶縁対策を実施した。ベーキングジャケットを実装し、ベーク時の高温ヒーターからは保護されている構造とした。一般ユーザーに対しては、ソフトウェアにて動作できない機構としている。真空度低下による高圧電源の出力停止、フィラメント電流停止回路を実装した。
V.評 価
 機器開発タイプで開発した装置を改良し、二次イオンを光イオン化しTOF機能で質量分析することによって、40nm領域の無機物・有機物の高感度質量分析を可能とする実用装置を開発することを目標としている。開発は順調に進捗し、光イオン化ナノ質量イメージング装置の開発、ソフトウェアの開発、レーザー光に対する安全用インターロックの装備、などにおいて開発目標を達成している。以上のことから、本開発は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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