資料4

開発課題名「高度遺伝子解析のためのシャペロン材料の開発」

一般領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  丸山 厚【九州大学 先導物質化学研究所 教授】
中核機関 :  九州大学
参画機関 :  東京大学、名古屋大学
T.開発の概要
 遺伝子診断の汎用性を広げるためには、簡便性、迅速性、信頼性を向上させる必要がある。本課題では、試料採取から識別、検出まで遺伝子解析に要求される操作において総合的に信頼性と迅速性を高めるためのシャペロン材料を提供することを目指す。
U.開発項目
(1)DNAチップ法の迅速化
 これまでシャペロン活性が見出されたカチオン性主鎖と親水性側鎖を有する共重合体に加え、水素結合性基を有する高分子プローブを合成・評価した。このプローブを用い、遺伝子識別を行ったところ、識別時間30分を達成した。多サンプル同時(マルチプレックス)解析で、タイピング不良好のSNPサイトが存在するが、PCR増幅不良が原因であり、識別段階は良好であることがわかった。PCR条件に課題が残った。
(2)DNAチップ法の簡便化
ステップ数は5ステップと概ね目標を達成できた。試薬数も従来より削減でき、11個となった。これらにより測定の簡便化に成功した。
(3)他の遺伝子解析への波及
 K-Ras遺伝子をターゲットとした蛍光・消光機能をもつプローブを合成した。これを用い、変異型遺伝子の識別能を調べたところ、共重合体存在下において、装置の特性リミット限界の降温速度96 ?C/minでも変異型遺伝子を識別できることを示した。実検体での検証にも成功した。約100倍の加速に成功し、目標を達成した。
V.評 価
 ポリアニオンであるDNAにカチオン性共重合体(シャペロン材料)が相互作用する性質を利用して、SNP解析や病原菌、ウイルス感染の検出を迅速かつ簡便に行うことができる方法の開発が目的である。DNA識別時間の短縮、ステップ数や試料数の削減などの設定目標はほぼ達成された。また、実検体で30分以内の遺伝子タイピングを成功させた。分子ビーコンは反応速度が遅いことがしばしば問題となるが、DNA検出速度を100倍に高めただけでなく、S/Nを世界最高の500倍にするなど、目標外の成果も挙げた。多くの特許出願、論文発表も行った。今後事業化を目指して、さらに開発を推進することを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果をあげたと評価する[S]。


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