チームリーダー : |
戸野倉 賢一【東京大学 新領域創成科学研究科 教授】 |
中核機関 : |
東京大学 |
参画機関 : |
理研計器(株)、京都大学、茨城大学(平成23年度から)
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- T.開発の概要
- 気体分子の安定同位体比を測定することにより、温室効果ガスの発生源に関する知見を得ることが可能であるが、従来法では、採取サンプルの持ち帰り、前処理の必要があったため、現場でのリアルタイム測定は出来なかった。本開発においては、近赤外レーザーを基盤とした新規な分光分析法による、前処理なし可搬型の大気微量ガスのリアルタイム同位体計測装置を開発する。地球温暖化防止に加え、医療現場に於ける呼気分析による胃腸の健康診断・代謝診断など広い分野への応用が期待される。
- U.開発項目
- (1)二酸化炭素標準ガスを用いた装置の校正、大気ガスおよび呼気による装置
- CRDS(キャビティリングダウン分光分析)装置の性能評価試験を標準ガスおよび大気ガスにより実施した結果、δ13Cの決定精度については、大気濃度レベルのサンプルガスに対して温度および圧力制御をすることにより、5分積算で同位体質量分析計と同レベルの0.3‰未満を達成している。
- (2)CRDS分光法の検証
- 波長変調分光法については、δ13Cの安定性については同位体質量分析計の性能を大きく上回る0.02‰を達成している。一方、CRDS法では、同位体質量分析計と同レベルであった。このことから、2μm帯での二酸化炭素安定炭素同位体検出においては波長変調分光法の方が有利であると結論付けている。
- (3)メタン検出に関わる装置の性能評価試験
- 検出波長や計測セル圧力を最適化することにより、当初目標のダイナミックレンジよりもより広範な、数万 ppb から数 ppb レンジの混合比領域における計測の線形性を達成している。
- (4)光導波路素子を用いた中赤外光源によるメタン検出
- 3.4μm帯においてメタン安定炭素同位体検出に最適な12CH4と13CH4の吸収線を特定した。δ13Cの安定性の当初目標は信号積算時間5分で10‰であったが、100秒積算で1.6‰の安定性を達成している。中赤外差周波光源は開発途上であり、その出射強度の安定性の向上により更なるδ13Cの安定性の向上が見込まれることを明確にした。メタンの検出下限については、中赤外差周波光源の出射強度が安定している条件ではppbオーダーで測定できることが確認している。
- (5)試作機の製作、評価
- サイズ:0.084 m3、重量31.5kg の多重反射光学系で構成される波長変調吸収分光可搬型計測装置のプロトタイプ装置を完成させた。開発目標値であるサイズ0.15 m3と重量30 kg(光学系部分のみ)を達成した。大気の二酸化炭素安定炭素同位体の連続計測を行い、0.1‰程度の安定性で安定な連続計測が行えることを実証した。
メタン安定炭素同位体検出試験については、標準ガスにおいて数‰程度の安定性で安定な連続計測が行えることを確認している。
- V.評 価
- 2μm帯近赤外半導体レーザーと多重反射セルを用いた吸収分光法を開発することによって、二酸化炭素やメタン中の炭素の同位体比を高感度かつ簡便に測定する計測システムの開発を目標とした。二酸化炭素の炭素同位体比の測定、メタン検出の性能評価や試作機の性能に関して開発目標を達成している。以上のことから、本開発では、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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