資料4

開発課題名「超高速・超解像1蛍光分子顕微鏡システムの開発」

一般領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  楠見 明弘【京都大学 物質-細胞統合システム拠点 教授】
サブリーダー :  竹内 信司【(株)フォトロン イメージング部開発グループ 新市場製品開発チーム チーム長】
中核機関 :  京都大学
参画機関 :  (株)フォトロン
T.開発の概要
 本課題では、生きている細胞内の構造体と分子挙動を理解するために、生細胞中の1分子毎の位置・動き・活性化・結合を、手に取るように観察可能で、かつ生細胞を、電子顕微鏡並みの空間分解能で観察可能な蛍光顕微鏡システムを開発する。1分子観察を分子の個数回だけくり返すことで、光回折の壁はなくなることが見込まれる。
U.開発項目
(1)1蛍光分子高速追跡に特化した高感度・高速度カメラシステム開発
 有効画素数320×256画素、撮影速度45kHz、S/N比54dB以上等、全ての性能で最終目標を達成し、撮像速度は最終目標の1.5倍に達した。
(2)テラヘルツ波照射による、蛍光プローブの発光量子制御技術の開発
 テラヘルツ波照射による暗状態の抑制(テラヘルツヒーリング)は達成できなかったが、代替として化学的手段による暗状態の抑制方法を開発した。
 上記方法により、10kHzの1分子観察で1000フレーム以上連続追跡できる分子数が約5倍増加し、暗状態での滞在時間を80%抑止することに成功し、最終目標を上回った。
(3)超解像・超高速蛍光顕微鏡システムの開発
 開発したカメラシステムでPALM(Photoactivated Localization Microscopy)装置を開発し、45kHz(22マイクロ秒分解能)で10nmレベルの1蛍光分子位置決定制度を達成し、最終目標を上回った。
 上記を活用して、「細胞膜がアクチン繊維の網目により、全面仕切られている」等の生物医学的な重要な発見につながった。
V.評 価
 1蛍光分子高速追跡に特化した高感度・高速度カメラシステムを開発し、それを活用して超解像・超高速蛍光顕微鏡システムを開発した。最終目標を上回る撮影速度(最終目標の1.5倍)を達成し、蛍光プローブの暗状態抑止も、当初設定したテラヘルツヒーリング法の代替法を開発して、最終目標値を上回る80%抑止に成功した。本顕微鏡システムにより、細胞のリン脂質や脂質アンカー型タンパク質のホップ拡散の発見等 生物学的に重要な発見が報告され、今後幅広い展開を検討できる技術と大いに期待できる。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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