資料4

開発課題名「光コムを用いた空間絶対位置超精密計測装置の開発」

一般領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成21年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  松本 弘一【東京大学 大学院工学系研究科精密工学専攻 特任教授】
サブリーダー :  石橋 爾子【ネオアーク(株) 技術開発部 副主任研究員】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  ネオアーク(株)、(独)産業技術総合研究所、高エネルギー加速器研究機構(平成22年度まで)
T.開発の概要
 近年、大型科学・生産工場・安全工学などの分野においては、長さ・距離測定の精密化が重要な課題となっている。本開発では、光コムレーザーの精密パルス干渉性と高周波数群とを利用して、空間絶対位置を精密に計測する装置を試作・開発し、また大型部品の三次元空間位置設置技術の実現も目指す。これにより、我が国の国家戦略として期待される次世代フォトンファクトリー建設の他、ものづくり産業における品質管理やインフラ設備の安全確保などに貢献することが期待される。
U.開発項目
(1)光コムパルス干渉計測技術
 大気のゆらぎや機械的振動などを音響光学変調器を用いたヘテロダイン干渉計を開発し、位相敏感検波法により検出信号のSN比を良くすることによって、干渉縞の位相を精密に測定している。また、干渉縞の実時間処理技術も完成させた。これらの結果、403 mまでの距離において、目標を大きく上回る約4 μm(相対精度0.01ppm)の精度で測定が可能であることを実証している。
(2)ゆらぎ補償技術
 2色の光コムを用いた長光路ヘテロダイン干渉計を開発し、10時間の環境変動による空気屈折率変動を光学的計測結果のみで自己補正する技術を開発し、目標を大きく上回る空気屈折率補正精度(0.014 ppm)を実現した。環境パラメータの精密測定が不要で、光学測定だけで直接最終結果が得られることは、実用計測の高精度化に大きなインパクトがある。
(3)ヘロダイン非接触計測技術
 複数の半導体レーザーの光コムへのオフセット周波数や音響光学変調器を利用して、スーパーヘテロダイン干渉を実現し、目標を超える成果が得られた。この干渉計によって22mの測長を30 nmの精度で実証すると共に、表面粗さ1.6 μm(最大50 μm)の粗面物体に適用し、9 mまでの長さの非接触計測を0.2 μmの精度で実現し、目標を超える成果が得られた。
(4)光コム制御技術
 光コムの温度調整能力を高めることによって安定性を向上させた。また、光コムは野外に持ち出せる可搬なサイズにコンパクト化して作りこんだ。光コムの繰り返し周波数を可変できる機能を付け、繰り返し周波数を10-11以上の安定度でGPS周波数に同期させた。2台の外部共振器型半導体レーザーを作製し、これらのオフセット周波数に100 kHzの差をつけて光コムへのオフセット周波数ロックを実現し、目標を達成した。
V.評 価
 光コム技術を応用した新しい測長・測距法の提案並びにその実現を目指した機器開発である。空気の揺らぎ補正,温度揺らぎへの対応など実用にも配慮されており、予想を上回る成果が得られている。実証試験においてやや不十分な点は見受けられるが、本技術の応用可能範囲は広く、今後の展開が期待される。今後は、応用分野をよく検討した上で、実際に本機が利用される環境にも配慮した製品化に向けた開発を継続されることを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業に相応しい成果を得られたと評価する[A]。


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