資料4

開発課題名「迅速がん診断用赤外顕微装置の開発」

一般領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成21年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  三好 憲雄【福井大学 医学部腫瘍病理学領域 助教】
サブリーダー :  武田 秀樹【(株)第一科学 特機営業部 部長】
中核機関 :  福井大学
参画機関 :  (株)第一科学、日本分光(株)
T.開発の概要
 従来のがん臨床病理診断では、患者側が最終診断結果を得られるまでに日数を要し、また診断結果の定量性の点から客観性に欠けるという問題点がある。本開発では、極微量術中凍結切片組織の新鮮度を保持するセルホルダーを設計・開発し、がん生組織内タンパク質の特異的2次構造成分を抽出することにより、細胞を固定・染色することなく、組織の質的変化を従来の4倍の空間分解能で画像化することを目指す。これにより、検査時間を60分の1に短縮するスクリーニング装置を実現し、病理診断医師に信頼の置ける生検診断補助手段を提供することが期待される。
U.開発項目
(1)診断顕微装置システムの構築
 正確な病理診断を行う為の制御条件を検討した。高鮮度を保持し、低温計測が可能な「鮮度保持セルホルダー」を開発し、15時間以上、安定した湿度・温度条件で計測可能な装置システムを開発した。
 また、正確な病理診断の為には、病理組織の鮮度保持が重要であることから、キャリアーボックスの開発等、鮮度保持システムを構築し、開発目標をほぼ達成した。
(2)がん分化度の判定
 高分化肺腺がんを使い、がん組織のH&E染色像とタンパク質二次構造成分画像(α/β)のPCR分析の結果、がん悪性度に関する再現性のよい検量線を構築することが出来た。また、15分以内に4値化の診断画像を構築できた。
V.評 価
 FT-IRを用いて、顕微スペクトロイメージングにより、がん組織の病理診断を高速に行う装置を開発した。凍結切片組織の鮮度を保持できる極薄セルホルダーを開発し、15時間以上安定した条件で計測可能な装置システムを構築し、開発目標を達成した。がん組織のH&E染色(ヘマトキシリン&エオジン染色)像とタンパク質2次構造成分比画像(α/β)のPCR分析の結果、この検量線から肺腺がん診断図を描画できることを予備的に示した。しかし、がん化とタンパク質2次構造変化との関係の分子生物学的根拠は十分に示されておらず、今後の更なる原理検証の進展と実用化に向けた取り組みが望まれる。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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